認知症の「排泄ケア」 気をつけるべき点は?
人としての「尊厳」への配慮が大事
―――「排泄ケア」をするうえで配慮しなくてはいけないことはありますか。 排泄ケアがセンシティブなのは、人としての尊厳がそこから壊れてしまう可能性があるからです。電車の中で尿や便の臭いがする人がいたら隣には座らないですよね。ご本人は、不安だし差別的な扱いも受けるし、QOLが著しく下がります。 認知症の方は言語が通じなってくると、その分感性が強くなりますから。だから尿や便を漏らしてしまったことはわからなくても、周りがどう反応しているかということには敏感です。その方が長い人生のなかで培ってきた価値観も影響していると思います。そこに人としての尊厳が存在しているんです。家族が感じる負担も並大抵ではないはずです。 排泄ケアをするためには毎晩何度も起きなくてはいけない、排泄物だって決してきれいじゃない。不安だって感じるでしょう。認知症の方の排泄ケアは大切なことですが、それだけをクローズアップしてどうこう言う問題ではないと考えています。「食べる」「寝る」「排泄」と、生きていくうえのサイクルの一つとして、必要なことを考えていけばいいんです。快食・快眠・快便で、日々どうしたら気持ち良く生活していけるかを考えることが重要だと思います。 ■西村かおる(にしむら・かおる) 日本三育学院カレッジ看護学科卒業、東京都公衆衛生看護専門学校保健学科卒業後、東京衛生病院に訪問看護婦として勤務。その後、英国にて地域看護コース、終了後、コンチネンスアドバイザーについて失禁看護を学ぶ。帰国後、コンチネンスセンター(排泄ケア情報センター)開設。現在、NPO法人日本コンチネンス協会(http://www.jcas.or.jp/index.html)の会長を務めるほか、コンチネンスジャパン(株)専務取締役。全国各地の病院の非常勤でコンチネンスのアドバイスを実施。