「大阪維新」対「非大阪維新」保守層には悩ましい選択か
新しい大阪府知事、大阪市長を決める大阪ダブル選挙が、最終盤に突入した。府知事選には自民推薦の新人で前府議の栗原貴子氏、大阪維新の会公認で再選を目指す現職の松井一郎氏、無所属新人で元高校教諭の美馬幸則氏の3候補(届け出順)が立候補。 市長選には大阪維新の会公認の吉村洋文前衆院議員、無所属の中川暢三元北区長、無所属で元会社員の高尾英尚氏、自民推薦の柳本顕元市議の新人4候補(同)が立候補。 府知事選、市長選とも、事実上、有力2候補による「大阪維新」「非大阪維新」対決の様相で、両陣営とも最後の追い込みに余念がない。対決色が鮮明になる半面、保守支持層の有権者からは、ため息が漏れてくる。すそ野の広い保守層にとって、「自民」と「大阪維新」に割れた保守分裂の選挙構図ともいえ、どちらか一方に決めかねるというわけだ。迷いながらも究極の選択を迫られる保守層の声を集めた。
自民と大阪維新の間で揺れ動く保守層
中央政治では安倍首相人気を背景に、盤石ともみえる一強多弱体制を固める自民。しかし、大阪ダブル選では、大阪維新の公認候補を相手に、自民は非大阪維新勢力を結集して議席奪還を狙う挑戦者の立場だ。保守層は自民と大阪維新の双方に広がっており、保守層にとって、悩ましい選択を強いられる選挙となっている。 「どちらかといえば、自民の方ですかね」と話すのは、40代の税理士。自民、大阪維新双方の政策を点検しつつ、今回のダブル選では、他党と幅広く連携できる自民候補を支持するという。 「仕事が集まる東京は景気が良いようですが、税務相談に乗っている大阪の中小企業からは好況感が伝わってきません」と嘆く。「議会、行政、経済界をうまくまとめて、景気浮揚策を着実に推進できる市長を選びたい」と、政策推進に欠かせない自民候補の調整能力や連携能力を重視する。 ベテラン社長は「敵対関係を演出し、政局を繰り返す大阪維新政治は支持できない」と強調。ベンチャービジネスを起業後、苦労の末に成功した経験の持ち主だけに、保守の立場から大阪改革の道を探ってきた。2008年の府知事選で、自民府連推薦で当選した現大阪維新代表の橋下徹大阪市長を、「改革の旗手と見込んで応援した」時期があったという。 しかし、大阪維新結成後、大阪都構想などをめぐり、大阪維新と、自民をはじめとする他政党との対立が、激化。「どんなにすぐれたアイデアがあっても、対立ばかりしていては、本当にすぐれた仕事ができないのは、ビジネスも政治も同じではないか。それが大阪維新陣営に分かってもらえないのが残念」と、ダブル選挙では自民候補を推す。 自民候補を後押しする別の会社経営者も、「自民がいちどは橋下さんを応援したことは、反省しなければいけない」と率直に打ち明ける。「大阪維新が登場してからも、私は自民ひと筋でぶれていない」(70代男性)という自民一本槍派とは別に、自民から大阪維新支持へ移った後、再び自民に戻ってきた自民回帰派保守層が少なからずいるようだ。