負けるとしても「若者と本気でぶつかれ」...ノーベル賞学者と永世名人が説く、若者から刺激を受ける「幸せ」と「意義」
日本のおとなしい若者
谷川 それに比べると、日本の若い世代は遠慮しているのか、ちょっとおとなしい感じがしますね。国民性もあるのかもしれませんが。 山中 日本社会のいい面であり、悪い面でもありますが、歳の離れた者同士がお互いに対等に向き合うことはほとんどありませんよね。そもそも日本では、誰も僕のことを「シンヤ」とファーストネームでは呼んでくれない(笑)。 谷川 それは私も呼べませんけれども(笑)。 山中 グラッドストーンで「シンヤ」と呼んでいた日本人研究者も、日本に戻ってくると「山中先生」と呼称が変わってしまうんです。「京都大学iPS細胞研究財団」が設立されたとき、お互い「さん」付けで呼ぼうというルールをつくって、僕は「山中さん」と呼んでもらうように決めたんです。僕のほうはそれでいいんですけれども、相手からはなかなか最初大変だったみたいです。いまだに「山中先生」と呼ぶ人がいます。それくらい呼び方というのは難しいんだなということを痛感しました。 ただ、そこに先ほど話したAIが入ってきたでしょう。AIにそうした忖度はありませんからね。若い人だけではなくてAIも加わって、両方から刺激をもらえるようになって、ある意味いい時代になってきたなと思っています。 『「今では立場が逆転」…医学と将棋のプロフェッショナルの、老いて「諦める」ものと「それでも頑張り続ける」もの』へ続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/谷川 浩司(棋士)