【第25回 車いすラグビー日本選手権大会】古豪復活に挑んだBLITZが8年ぶりに王座奪還。
BLITZか、それともSTORMERSか。 会場の全視線が、決勝のコートに向けられた。 横森史也-庄子 健-中町-橋本、STORMERSのスターティング・ラインアップを待ち受けるは、もちろん“国内最強ラインアップ”。 勝たなければいけない、勝って当然という重圧を凌駕するほどの自信がBLITZにみなぎる。ティップオフを待つSTORMERSにも不安な表情は一切ない。準備した自分たちのラグビーに集中する。 試合は、立ち上がりからバチバチの走り合いとなった予選ラウンドでの対戦とは一転、相手のミスを狙う鋭い視線が交差する、緊張感ある展開となった。 STORMERSをリズムに乗らせまいと、BLITZは相手のボールがコートに入る前から、強いプレッシャーをかけ続ける。パスコースをことごとく潰されたSTORMERSは、フロントコートまでボールを運べない苦しい状況に追い込まれる。ボールがどこに動こうとも、プレッシャーをかけ続けるBLITZはターンオーバーを奪い、1点、また1点と差を広げていく。
予選ラウンドの対戦では見られた、激しい攻防の中でも勝負を楽しむ、橋本や池崎のニヤリとした表情は封印されてしまった。国際試合にも劣らないデッドヒート。強度を落とさない相手に、STORMERSは今シーズンのチーム・スローガンである「執着」を体現し続ける。 ただ、その間にもじりじりと離しにかかるBLITZ。両チームともにメンバーを入れ替えることなく、27-20とBLITZの7点リードで前半を終えた。 両者とも同じラインアップで後半に突入した。 第3ピリオド終わりに差し掛かった頃、STORMERSベンチが動きメンバー交代。それに連動して、どこまで差がつけば、この最強ラインを下げるのかと注目されたBLITZも、小川と池崎を残して交代。すでに11点差となっていた。 試合は終盤。どんなに劣勢に追い込まれようとも、STORMERSのキャプテン・中町は感情をあらわにすることなく冷静だった。 その思いに呼応して橋本も奮起する。中町がトライラインをめがけて放ったロングパスを、池崎を振り切った橋本が全速力で追う。橋本はあらゆる筋肉と体幹を駆使して、目一杯に手を伸ばし、ライン超直前で決死にキャッチしてトライ。 それはまるで、逆サイドからのキックパスを、トップスピードで駆け抜けてきたウィングがキャッチして鮮やかにトライするラグビーのプレーにも似ていて、今大会のハイライトシーンのひとつとして刻まれた。