26年ぶりに上野動物園で誕生! すくすく育て、スマトラトラの4頭の子どもたち【写真全60点】
2月22日より、CREA WEBでは「猫」特集が大好評公開中です。今回は、凛々しくも愛らしい猫科の動物・スマトラトラに会いに、上野動物園にお邪魔しました。撮り下ろしや貴重な成長記録画像もぜひご覧下さい。 【画像】アサはこの日、第2展示場に。最初は隅っこを行ったり来たりだったが……。
昨年春に生まれた「アサ」に会いに
2023年4月、そして12月に東京都恩賜上野動物園でスマトラトラの赤ちゃんが次々と誕生しました。4月生まれの1頭はインドネシア語で“希望”という意味の「アサ」という名前が付けられ、現在、その無邪気な姿を来園者に見せています。 11月の公開開始からずっと第二展示場に出ていたアサ。この日も、バックヤードとの入り口付近らしき場所を歩き回りながら、遠くから見守る来園者のほうへチラッと視線を向けます。 少し経つと、池のほうへ。幼いアサのために浅く水が張られた池に入ろうとしますが、水に濡れるのが少し嫌な様子。前足を振って水をはらう仕草を見せながらも、意を決したように体を浸けて休んでいました。 上野動物園でのスマトラトラの誕生は、なんと26年ぶりのこと。お母さんは神奈川・よこはま動物園ズーラシア生まれ、横浜市立野毛山動物園からブリーディングローンによってやってきた「ミンピ」。お父さんは宮城・仙台市八木山動物園生まれ、大阪・みさき公園からやってきた「ブラン」。赤ちゃん誕生の裏にはさまざまな工夫があったそう。上野動物園で広報を務める、教育普及課長の大橋直哉さんに、詳しくお話を伺いました。 「ミンピとブランの相性が大事なのはもちろんですが、ミンピは元々、発情がうまく来ないところがありました。以前から岐阜大学動物繁殖学研究室の楠田(哲士)先生にお願いしてホルモン分析を行っていたのですが、周期の波があまり出ていなかったので、野生に近い縄張りの状態を作ったり、一定以上の体重をキープするようにしたりと工夫することによって2回の繁殖に成功しました」(以下、すべて大橋さん)
無事1頭を出産。しかし、授乳がうまくいかず……。
1回目の妊娠が判明すると、ミンピが落ち着いて過ごせるようにと産室を用意。人がなるべく立ち入らないように監視カメラをつけるなどして準備を進めてきました。そして、昨年4月28日、ついに出産。2頭のうち1頭は残念ながら死産となってしまいましたが、生まれた瞬間は、見守っていた職員の皆さんから安堵の声がもれたそうです。 「生まれてから大事なのは動いているかどうか、授乳できているかどうかです。(生まれた子が)鳴いているのはよくない。お腹が空いていると鳴くので、静かであることが望ましいのですが、ミンピの場合、子どもに興味を示さなくなってしまい、アサは鳴いていました。 授乳ができていない可能性も考慮しつつ、なるべく手は出さないほうがいいため様子を見ていたところ、ミンピが子どもに興味を示さなかったため、この先、授乳は難しいと判断して介添え哺育に切り替えました。その後、ミンピの元に戻したところ、子どもへ興味を示したり、授乳の体勢をとったりはしたのですが、少し攻撃的になってきたこともあって人工哺育に切り替えました」 動物園で飼育しているとはいえ、スマトラトラは野生動物。人に慣れすぎてしまうと今後の繁殖に影響を与える可能性もあるため、飼育担当者を固定して面倒を見たり、同園で飼育しているほかの個体と檻越しに会わせたりしながら、なるべく野生に近い環境を保って成長を見守ってきました。 また、健康診断によってアサには先天性が疑われる腎臓の異常があることが判明。根治は難しいものの、今の状態を維持、そして改善していく努力をしている、と大橋さんは語ります。