メガネの地場産業はウエアラブルの未来を拓けるか
ただ、フレーム作りにいろんなノウハウがあって、理想的なフレームが作れたとしても不安は残る。メーカーがデザインだけを鯖江に任せ、量産拠点を海外に置くかもしれないからだ。それでは地元は面白くない。グローバルなメーカーに対する交渉を地方の中小企業1社でやるには限界があるだろう。 田中社長は「鯖江のメガネ作りは、デザイン、製造、販売などと分業が進んでいる。デザインから販売までを視野に入れ、これらの分業がうまくリンクさせていくことが大事だ。メーカーのニーズを受け入れる窓口として小売が機能していくことも考えていかなければならない」と話す。 同県では、ウエアラブルをテーマにした講演やワークショップが開かれるようになってきた。県や市が主催するシンポジウムもある。地元メディアも「ウエアラブル先進県としての地位を築いてほしい」と期待を寄せる。その一方で、研究開発費を予算に組める事業所は多くないという現実もある。 伝統的な地場産業が新しい未来を切り拓いていくためには、地元事業者の努力だけでなく、理解あるデバイスメーカーとの協働、そして行政などの支援、これらの結束が必要とされているということだろう。 メガネが視力補正の道具以上のモノになる可能性があるには違いない。どうすれば今の地場産業から新しい産業を創出できるのか、その模索はまだ始まったばかりだ。