メガネの地場産業はウエアラブルの未来を拓けるか
同博物館で、ソフトバンクモバイルが実験したのは、グーグルのメガネ型端末である「グーグル・グラス」とソニーのスマートウォッチを使った館内の展示案内だ。恐竜骨格7か所の前に来場者を検知するセンサーを設置した。来場者が展示物に近づくと、これを検知したセンサーが信号を発信する。信号を受信したグーグル・グラスにマスコットキャラクターの映像が映しだされ、恐竜を捕獲するよう指示が出る。来場者がグーグル・グラスのカメラで骨格を捉えると「捕獲」したことになり、その恐竜の説明が音声でされるといった具合だ。
センサーにはBluetooth技術を使ったiBeaconを、骨格の立体物認識技術にNECのGAZIRUを使用した。それぞれの機器が想定したように機能するかを実証するのがこの実験の目的だ。センサーを設置する場所が手すりなのかベンチなのか、センサーからの信号を受信するのがメガネなのか時計なのかで、それぞれの高さが違ってくる。高さが違うと電波の届き方が変わってくる。 また、展示物の前を通過する人物のスピードは場所によって違う。適切な電波強度がどれくらいなのかを計測する意味があった。実験を担当した同社商品戦略推進部の小沢元氏は「今回の実験は小規模だったが、グーグル・グラスのようなハイパワーでない機器でも、高度な処理が実現できた意味は大きかった」と評価した。 実験では100人近い一般の来場者がグーグル・グラスやスマートウォッチを身に付けて展示を体験。多くは、初めて使う人たちだったが、「アミューズメントパークのような経験ができて楽しかった」と感想を話していたという。 小沢氏は「特にこうしたアミューズメント体験において、メガネ型の端末は、つけ心地、つまり装着感が大事だ。スマートフォンが持ちやすさを評価されるのと同じことで、技術とフレームが融合していくことは重要な要素だ」と力説する。
IT技術とメガネフレームは融合できるか?
IT技術とメガネフレームの融合──。鯖江市神明町のメガネ小売「GANKYO」の田中幹也社長は「技術とメガネフレームのノウハウがぶつかり合うところが『重さ』だ。デバイスをフレームに乗せると重量は20gを軽く超える。これを解決してくのが今後の課題」と指摘する。 田中社長は、心地よくかけられるメガネのフレームの重さは20gが限度ではないかと考えている。バッテリーの重量が40gもあると、それだけで、かけ心地が大きく損なわれる。フレームに搭載する機能が増えれば増えるほど、全体の重量は増す。カメラを前に付ければ、当然重さは前方にくる。フレームはこの重さを逃してやるような構造にしないといけない。 重量増は不可避なのだから、バッテリーの形状を変えたり、後方にバッテリーを配置するなどして、重量バランスが重要なカギを握る。そうした工夫を盛り込んだメガネフレームを新しく作ることになる。この町の人たちは、メガネを快適に装着するためのノウハウを一番よく知っている。