「中国のスキー場と同レベルになってしまう」...雪不足でニセコの魅力がなくなる!? 地球温暖化による暖冬の恐怖
今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション *『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。 『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第48回 『パウダースノーがなくなる!?...ニセコ存続のために「入場者数を減らす」 観光客を減らしても発展できるビジネスの秘密』より続く
地球温暖化による暖冬の恐怖
コロナ禍の陰に隠れてしまったが、実はより深刻な問題が露呈していた。それは雪不足だ。混雑に伴うパウダースノーの消失は、上述したように人為的に解消できるはずだ。だが天候や自然を人間がコントロールすることはできない。雪がなければパウダースノーも当然ない。ニセコの魅力の根幹を失うことになり、致命的な打撃となる。 スキー場はそもそも営業日数が極めて限られている。それだけに雪不足により営業ができない日が増えるのは痛手だ。最悪のシナリオとして、雪不足→営業日数減少→人工雪の導入→パウダースノーではない→顧客満足度の低下→訪問者減少→営業断念し廃業という悪循環をたどることなる。人工降雪機や人工造雪機を導入すれば、ある程度の雪不足は解消できるとはいうものの、コストがかかる話であり、それでは中国など雪質が十分でないその他スキー場と同じになってしまう。
雪の降らないニセコ
気象庁の札幌管区気象台が2019年3月に公表した「北海道地方地球温暖化予測情報」によると、ニセコグラン・ヒラフスキー場などを擁する俱知安町において、20世紀末の平均値(1981~2010年)と比べた場合、21世紀末には、年間の平均気温が4・7度前後上昇するという。そのため、現在は年間数日しかない最高気温が30度以上となる「真夏日」が27日前後、現在はほとんどない最低気温が25度以上の「熱帯夜」も9日前後出現する予測となっている。また、最高気温が零度未満になる「真冬日」は、20世紀末の平均値と比べ、俱知安町では年間47日前後減少し20日前後となってしまうという。ニセコで今よりも雪が降る日が大幅に減ってしまう可能性があるということだ。 北海道道内のニセコエリアを含む日本海側では、年間降雪量が、20世紀末と比べて21世紀末には32・0%も減少すると予測されている。 クーシュベルやベイルのように、ニセコほどの雪質がなくても、世界的なスキーリゾートの地位を確保している例は欧州や北米に多くある。外資系ラグジュアリーホテルの充実などにより、スキーだけでなく、スパや温泉に食事など、ニセコに滞在すること自体をステータスとする流れを作っていくことが、より大切になろう。 『パンフレットは無数にあるのに、全体の地図がない...山のようなパンフレットから暴かれる「混沌とした」ニセコの実態』へ続く 【ニセコの最新の状況についてはこちらの記事もご参考ください】
高橋 克英(金融アナリスト)