<ラグビー>南アに勝っても決勝T進出が難しいボーナスポイントの是非
ラグビー界におけるボーナスポイントは、競技の娯楽性を高めるツールだ。 1991年大会以降にプロ化が進んで以降、運営側は興行的側面からよりスリリングな試合を演出する取り組みを重ねている。ルーリングも4年に1度のワールドカップが終わるごとに攻撃側が有利となりうる条文が加算されており、ボーナスポイントの発足もその一環と見ることができる。ワールドカップでは2003年から導入された。 日本国内でも、社会人の最高峰集団であるトップリーグなどが採用している。そんななか、限られた予算と戦力ながら幻惑的な攻撃スタイルでボーナスポイントとファンの関心を集めたのが、2010年度前後のサニックスだった。 もっとも、すべての人が満足するルールなど存在しない。一部では「ボーナスポイントは馬鹿げたルールでは」といった批判もある。 日本国内では、上位チームに点差をつけられた下位チームが「4トライ以上によるボーナスポイント獲得」にやっきになるあまり、競技の根本にあるべきプレーの正確性や各クラブの規律を乱す例は多々ある。 ワールドカップの歴史でも、ボーナスポイントで涙をのんだチームはある。記憶に新しいところでは、2011年の前回大会(ニュージーランド)の予選プールAに入ったトンガ代表だ。ジャパンと強豪のフランス代表を破って2勝2敗、勝ち点を9としたが、負かしたフランス代表と勝敗数で並び、ボーナスポイントの差で予選プール進出を逃したのだ(フランス代表は総勝ち点11)。ちなみに予選プールこそふらついたフランス代表は、その後、結束。決勝戦まで勝ち上がった。これを「トンガ代表の悲哀」と取るか「フランス代表の成功譚」と取るかはその人次第だが、日本代表がトンガ代表と同じ立場だったら日本国民はどう反応するか…。 本稿筆者としては、ボーナスポイントの制度自体に異論はない。「4トライ以上を…」と気負ってチームの規律が乱れる事象は、制度というよりそのチームの問題だと思われるからだ。 もっとも、もし今度の日本代表が残り試合を全勝しながら8強入りを逃した場合は、こちらの見解とは無関係にボーナスポイントの是非が議論されるだろう。 (文責・向風見也/ラグビーライター)