（写真：静岡新聞社）

　27日投開票の衆院選は静岡県内8小選挙区に5人の女性候補者が名乗りを上げた。2012年と並んで過去最多で、29人の全候補者に占める割合も17・2％と最も高い。政治分野のジェンダーギャップ（男女格差）が指摘される中、各党の公約には女性参画推進に関する項目が並ぶ。ただ、女性候補者の割合を25年までに35％とする政府目標はなお遠く、論戦も盛り上がりを欠いている。 　「女性が働きやすく、子育てしやすい社会をつくっていく」。17日の静岡市中心部。立憲民主党元職の高橋美穂候補が街頭演説で女性活躍や選択的夫婦別姓制度について持論を述べた。演説後の取材に「女性がたくさん立候補するのはいいこと。社会も議会も変わっていく」と期待した。 　静岡市葵区、駿河区をエリアとする静岡1区は候補者5人のうち女性が3人を占める。 　自民党前職の上川陽子候補は「初の女性総理」を目指し党総裁選に出馬した。外相時代には国際会議で女性リーダーと議論する機会が多かったとして「女性議員は半々でもいい。挑戦してもらうことが社会を動かす大きな力になる」と参画を呼びかける。共産党新人の鈴木節子候補も「組織を挙げてジェンダー平等を訴えたい」と強調した。 　一方、日本維新の会新人の山下洸棋候補は「男性か女性かということはあまり関係なく、政策で戦っていく」との姿勢を示す。無所属新人の鈴木惇弘候補は「女性が増えるのは良いこと」と話した。 　今回の衆院選に立候補した女性は全国で314人、比率は23・4％で、ともに過去最高を更新した。自民が裏金事件に関係した候補者の比例代表への重複を認めない代わりに女性を積極的に擁立したことや、野党共闘が進まず候補者が増えたことが要因とみられる。多くの政党が公約に女性議員の数を引き上げる目標を掲げ、候補者の一定数を女性に割り当てるクオータ制導入などを明記した。 　ただ、候補者の主張は政治改革や経済対策、外交・安全保障など多岐にわたり、女性参画が主要争点に浮上しているとは言いがたい状況だ。静岡1区のある候補者は「本当は訴えたいが、時間が足りない」と漏らし、別の陣営関係者も「重要なテーマだが票に直結しない。言及は少ないのでは」とみる。 　静岡大の井柳美紀教授（政治学）は政治分野の男女共同参画推進法が各党に男女の候補者をできる限り均等にするよう努力義務を課していることに触れ、「多様な声を政治に反映させるためにも、各党が候補者発掘を含めて真剣に取り組む必要がある」と指摘した。