松枯れの倒木で防獣柵損壊の危険 長野県松本市が予防伐採を実施へ
松枯れ被害の拡大に伴い、枯れた木が倒れて獣害防護柵が損壊するケースが長野県松本市内で急増している。修復箇所の累計延長は令和4年度が730メートル、昨年度は842メートルで、本年度は6月末時点ですでに832メートルに上る。このままでは田畑へのシカの侵入・食害が広がりかねないとして、市は本年度、柵周辺のマツをあらかじめ伐採する対応に乗り出す。 里山辺地区では柵の破損が数年前から問題になっている。藤井町会の元町会長、藤井敬善さん(73)によると「柵を直してもまた木が倒れて壊され、いたちごっこの状態」。侵入したシカに果樹の芽を食われたり水田を荒らされたりする被害が出ているという。 中山地区の南東部では、柵付近に仕掛けたわなにシカが掛かる頻度が2日に1回まで増加している。一方で、松枯れの激甚エリアでは柵周辺のマツが傾いており、地元農家は「このままでは破損箇所がシカの『電車道』になる」と心配する。 市の森林環境課、農政課によると、立ち枯れたマツは5年もすると倒れやすくなる。近年は鳥獣被害額が拡大傾向にあり、その背景には松枯れで相次ぐ柵の破損もある。 このため市は本年度、里山辺の4カ所(約400メートル)、中山の11カ所(約600メートル)で柵を挟んで幅20メートルの範囲にあるマツを予防策として面的に処理することを決めた。費用を計上した補正予算が市議会6月定例会で可決し、秋の収穫時期までに着手できるように準備することになった。 市内の松枯れは15年ほど前から拡大を続ける。被害が甚大な四賀、岡田などでも同様の対応を望む声があるといい、市森林環境課は「土地所有者の同意を得られれば他の地区でも取り組みを進めていく」と話している。
市民タイムス