路上生活子ども救済施設が運営の危機 名古屋NPOフィリピン・マニラで運営
特定非営利活動法人「ICAN(アイキャン)」(認定NPO、日本事務局=名古屋市)がフィリピン・マニラで運営する、路上生活の子ども向け一時収容施設が、運営資金枯渇の危機に陥っている。助成金制度の終了で法人への寄付金のみで賄うが、利用者が増えたことで運営費がかさみ、現状の寄付金では足らなくなってきたためだ。現状が続いた場合、2年先までの存続は厳しいとの見方もあり、ボランティアの高校生や大学生が参加する街頭募金や、寄付金の呼びかけに力を入れている。
言語教育や食事などを提供 運営に年間400万円 前年度は240万円不足
施設は「ドロップインセンター」という名称で、2013年から、2階建ての建物を借りて運営している。治安上の問題から所在地などの詳細は非公開だが、現地の人や日本人のスタッフ、看護師などが週4日、午前8時から午後5時まで、困窮して訪れた子どもたちに、シャワーや食事、言語教育などを提供している。 運営費は、建物賃料や光熱費、提供食の材料費、治療費、人件費など、年間で計400万円ほどかかる。開設当初は、国際協力機構(JICA)の助成金と、法人への寄付金で賄ってきた。しかし、助成金は事業の立ち上げ時に使えるもので、事業継続には使えない。そのため現在は、寄付金のみでの運営となった。センター運営に使える2016年度の寄付金は160万円で、240万円の不足だった。
家もない、正しい名前も分からない……辛さ忘れるため、薬物に手を出す子どもも
ICANによると、フィリピンの路上生活の子どもたちは、25万人以上いるとされ、経済発展する地域との差が、激しい環境にいるという。センター周辺で生活する子どもの特徴は、出生登録がなく、正式な名前も分からない。家族との関係が断絶している子がほとんどで、帰る家もなく、学校にも通えない。けがの治療を受けられず、命を落とす子もいる。物乞いや靴磨き、廃品回収などで1日約100~200円程度の稼ぎを得るが、食料品よりも安く手に入るシンナーのような薬物を買い、辛い日々を忘れる行動に出てしまうという。
「路上生活の子どもが集まる」偏見 センターの努力で地域に理解広がり
センターには多い日に60人ほどが訪れる。長年通う子どもは、スタッフの代わりに他の子どもの世話をするようになった。「路上生活の子どもが集まっている」ということでセンターが地域から孤立し、子どもたちも差別を受けてしまうため、センター周辺の清掃活動で地域の理解を得ようと努力もした。その結果住民からは、「ドロップインセンターは、ただ食事や昼寝をさせる場と思っていたが、子どもの教育や社会参加を大切にしていると分かった」という声が上がり始めた。