ヤクルト・奥川恭伸、995日ぶり神宮勝利 「力もらった」初体験の満員ホームで5回1失点
(セ・リーグ、ヤクルト6-1阪神、10回戦、阪神6勝4敗、29日、神宮)神宮のマウンドに帰ってきた!! ヤクルト・奥川恭伸投手(23)が29日、阪神10回戦(神宮)に先発し、5回2安打1失点で今季2勝目を挙げた。右肘痛を発症して緊急降板した2022年3月29日の巨人戦以来、823日ぶりの本拠地での登板で、21年10月8日の阪神戦以来、995日ぶりに神宮で白星をつかんだ。満員の本拠地に舞い戻った右腕が、チームの連敗を4で止めた。 神宮球場に響く「おかえり」の声が、右腕の帰還を知らせた。先発投手として「奥川恭伸」の名前がコールされると、2万9491人が集まり、満員御礼となった球場が沸き上がった。帰ってきた奥川が、995日ぶりの神宮白星。再び本拠地のマウンドで輝いた。 「本拠地は特別。神宮で勝ちがついたのは、すごくうれしい。僕は満員の神宮球場が、初めての経験だった。本当にたくさん力をもらいました」 プロワーストとなる4四死球と制球に苦しみながらも、粘り強く投げ抜いた。阪神打線を相手に、5回87球を投げ、2安打1失点。味方打線の援護をもらい「チームの勝ちに貢献できるように。相手よりも1点でも少なくと思ってマウンドに上がった」と息をついた。 本拠地での登板は、右肘痛の影響で緊急降板した2022年3月29日の巨人戦以来、823日ぶりだった。9勝を挙げた21年は新型コロナウイルス禍で観客の入場制限があり、声出し応援も禁止されていた。初めて満員の神宮で浴びた歓声を力に変え、「新しいスタート」と語る神宮勝利。止まっていた時計の針を動かした。 度重なるけがを乗り越え、980日ぶりの白星を飾った14日のオリックス戦(京セラ)から中14日。前回の涙のヒーローインタビューから一転、今度は神宮のお立ち台でファンに笑顔を届けた。 保存療法で右肘が良くなった後も、けがが重なり、1軍のマウンドが遠かった。復帰直前の足踏みに、誰よりも悔やんだのは自分。野球の映像を見るのが、嫌になった時期もあった。自身の状態が上がるにつれて、積極的に見るようになった。長年、卓越した投球術を武器に第一線で活躍する菅野(巨人)や涌井(中日)らの映像を繰り返しチェックした。ときには2軍戦に登板する唐川(ロッテ)にも熱視線を送った。「ストライクゾーンで勝負して投球術で抑えているピッチャーが個人的に好き」。多くの時間を野球に費やし、成長につなげた。 右肘痛などのけがから復帰後は2戦2勝。1軍復帰登板となった14日のオリックス戦の少し前から、スマートフォンの待ち受け画面を元バレーボール男子日本代表の川合俊一さん(現日本バレーボール協会会長)の写真に変えた。「川合さんを待ち受けにすると運気が上がる」と紹介するテレビ番組を見たことがきっかけ。「サウナに入っているときに見て、脱衣所ですぐに変えました。歩くパワースポットと呼ばれているらしいです」。長いトンネルを抜け、勝ち運も上昇中だ。
チームの連敗は4でストップし、中日と並んで5位。「まだまだ優勝のチャンスはある。選手は誰も諦めていない。これから一つずつ勝って、また優勝できるように、一丸となって頑張りたい」。復活の階段を上がる背番号18がチームの救世主となる。(武田千怜)