残業が減ったのはいいがバイトが集まらなくなった…省力化・効率化進んだ製糖工場、離島ならではの悩み抱える
鹿児島、沖縄両県の製糖工場で4月1日から、働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が適用される。5年間の猶予期間中に省力化へ向けた機器の導入や操業期間の見直しが進んだ一方、残業代が減るとして頼みの季節労働者(アルバイト)が集まりにくくなる弊害が生じている。特に設備投資のままならない小規模工場は労働力不足の不安を抱える。 製糖工場で清掃作業中に機械に挟まれる 35歳の男性死亡 和泊町
鹿児島県内には奄美群島5島と種子島に計7工場ある。サトウキビは保存が利かないため、収穫後は各島で昼夜を問わず加工する。作業は12月~翌年3月ごろの収穫期に集中。離島のため人材確保が難しく、多くの工場は社員とアルバイトが12時間ずつの2交代制で操業してきた。 4月からは、これまで猶予されていた時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、複数月平均80時間以内という上限が科される。県内で生産量2位の新光糖業中種子工場(中種子町)は、適用開始を見据えて3年前に集中制御室を整備した。圧搾や濃縮、結晶化など各工程ごとに監視、制御していたのを1カ所に集約して必要な人員を減らした。 3交代制を導入し、長時間労働を抑制。勤怠管理システムにアラームを設定し、残業が45時間を超えそうになれば休むよう促している。浦島哲志管理部長は「残業オーバーの心配はほぼない。馬毛島工事も影響しアルバイトが集まりにくくなっているが、現時点では対応できている」と話す。
国は省力化・効率化を後押しするため、機器の導入費などに助成してきた。奄美市に工場がある富国製糖製造部の本田亮主任は「助成があったとしても自己負担は大きい。生産コストは上がっていて、価格転嫁できるわけでもないので設備投資は難しい」と漏らす。 同社は2019年から操業期間を約1カ月間延ばして休日を増やすことで2交代制を維持するが、アルバイトの充足率は悪化した。製糖に従事する期間が長くなる一方で残業は減り、給料が減ったからとみている。 本田主任は「短期間でがっつり稼ぎたい労働者には長時間労働の不満はなかったのに」とため息をつく。今後は作業工程ごとの人員配置を見直すことで省人化を図る。 与論町に工場がある与論島製糖も同様の悩みを抱え、アルバイトは募集に対して10人ほど足りない。若松智彦総務課長は「今でも管理職が現場に出ざるを得ない状況。バイトも高齢化しつつあり、いつまで来てもらえるか」と先行きを懸念した。
■時間外労働の上限規制 2019年4月の働き方改革関連法施行に伴い、時間外労働は原則月45時間、年360時間の上限が罰則つきで法律に規定された。臨時的な特別な事情があり、労使の合意があっても、年720時間、休日労働との合計が複数月平均80時間、月100時間を超えることができない。
南日本新聞 | 鹿児島