「事業費100億円」文化会館新築を断念…実施設計の1億2000万円回収できず
兵庫県豊岡市の新文化会館整備事業を巡り、関貫久仁郎市長は29日の市議会で、新築計画を断念する考えを明らかにした。事業費が当初の試算より大幅増となることが見込まれるのが主な理由で、既存の豊岡市民会館を大規模改修して対応する方針だ。(熊谷暢聡) 【画像】新文化会館の新築断念に伴い、大規模改修の方針が示された豊岡市民会館(兵庫県豊岡市で) 同市の中心的な文化施設である豊岡市民会館(1971年完成)と、旧出石文化会館のホール機能を統合した新施設として計画。当初は2025年度の開館を目指していた。既に実施設計を完了している。
総事業費を約65億2000万円と試算し、昨年8月から3回にわたって建築工事の入札を実施したが、落札業者が決まらなかった。建築資材などの高騰や技術者不足が影響し、今年度になって総事業費を再試算した結果、90億円程度まで膨らむ見通しになっていた。 市によると、従来計画で新築すると、現状では総事業費が100億円程度かかると見込まれる。財政負担が大きく、「市民サービスに影響を及ぼす可能性がある」と判断したという。 事業の再検討では、▽従来計画通り▽規模縮小▽豊岡市民会館の大規模改修――など6案を比較。80年間の長期的な財政負担は大きくなるものの、短期的な財政負担が軽く、新築に対する市民の要望を一定程度反映できる大規模改修に方針転換することになった。 本会議後、関貫市長は「100億円を使ってやることは財政的な面からできない。将来負担を残せない。市民の要望を極力、改修の中に加えていく」と述べた。 大規模改修では、新文化会館の基本計画などを踏まえて舞台の拡張や客席の更新、市民交流・子育て支援スペースの設置などを予定している。来年度中に基本設計をまとめ、29年秋の完成を目指す。 事業費は概算で50億円前後と想定しており、新文化会館の新築時と比べて市の実質負担は20億円程度の軽減が見込めるという。基本設計にかかる5900万円は補正予算案で債務負担行為として設定した。 現状の豊岡市民会館は老朽化が進み、機器の部品調達も困難になっていることから、従来の計画通り25年度末で休館する。新文化会館の整備断念により、実施設計にかかった約1億2000万円は回収できないことになる。建設予定地は、駐車場や広場としての活用を検討していく。