「5分以上目が離せない」医療的ケア児の子育てを支える 役所でたらい回しも…「困ったらまずはここ」の相談窓口ようやく全国に
▽どう支援するか先進事例を学ぶ首長ネットワーク結成へ ケア児の親にとって避けられないのが、保育所などを管轄する市区町村とのやり取りだ。この市区町村の間でも支援の格差は広がっている。横浜市は4月に「医療的ケア児サポート保育園」として12園を指定。それぞれで看護師らを確保し、ケア児を受け入れられるようにした。他の自治体でも、家族の休息のために一時的にケア児を預かる事業を行ったり、家族向けのガイドブックを作ったりしているケースがある。しかし、市区町村にノウハウがなく「センターに相談できたが、支援にはつながらなかった」ということもまだ少なくない。 こうした事態を打開しようと「医療的ケア児者を応援する市区町村長ネットワーク」の結成へ向けた動きが進んでいる。提案したのは、岐阜県飛騨市の都竹淳也市長だ。都竹氏は、岐阜県の職員時代に障害福祉を担当し、2016年の飛騨市長就任後も重度障害者を職員に採用するなど支援策に取り組んできた。
都竹氏は昨年11月の永田町子ども未来会議に出席し「首長の決断が必要だ。『福祉や医療を頑張る』と言う首長は多いが、何をどう支援するか言える人は少ない。先進事例を学ぶ機会をつくれば『うちでもやろう』という首長が出てくるのではないか」と訴えた。 会員を募り、今年11月の設立を目指す。発起人には都竹氏を含め、札幌市、山形県南陽市、東京都江東区、東京都世田谷区、岐阜市、大阪府豊中市、大阪府東大阪市、大阪府大東市、岡山県総社市、愛媛県八幡浜市、福岡県古賀市、佐賀県武雄市の計13人の市区長が名を連ねた。結成後は、国に政策実現や財政支援を求めていく予定だ。 ▽「付き添いがなくても学校に通えるようにして」 医療的ケア児支援法成立後の2年で、家族会の全国組織「医療的ケアライン」や、支援に携わる専門職らが集まる「医療的ケア児等コーディネーター支援協会」が結成された。 国はというと、これまでは障害福祉や医療、保育を所管する厚生労働省中心で担ってきたが、今後は4月に発足した「こども家庭庁」が主な担当となる。発足式には、特別支援学校に通うケア児の山田萌々華さん(15)がいた。取材に「保護者の付き添いがなくても学校に通えるよう看護師を増やしてほしい」と訴えた。
岸田文雄首相は発足式で「子どもたちにとって何が最も良いかを常に考え、健やかで幸せに成長できる『こどもまんなか社会』の実現、これがこども家庭庁の使命です」と話した。親の負担軽減に加え、子ども本人の悩みやニーズをすくい上げ、対策を講じられるか。政治が口だけではないか、試されることになる。