「5分以上目が離せない」医療的ケア児の子育てを支える 役所でたらい回しも…「困ったらまずはここ」の相談窓口ようやく全国に
▽疲労困憊の親をサポートする支援拠点、47都道府県で開設へ これまでは親が悩みを打ち明けたくても、どこに相談すれば良いか分かりにくかった。内容が保育や教育、医療など多岐にわたり、自治体の窓口をたらい回しになることも少なくない。育児で疲弊した親にとっては、相談先を探す作業自体が大きな負担になる。支援法ができたことで、都道府県が相談窓口として支援センターを整備できるようになった。「困ったら、まずはここに」という場所だ。 支援センターでは、相談支援専門員や看護師などの専門職が悩みを受け止め、サービスにつなげる。センターが中心となって自治体や学校、病院などと、ケア児を支える方法を話し合い、地域の体制を整えていく役割も期待されている。 2022年度までに40都道府県で整備が完了した。残る7府県のうち滋賀、大阪は4月に開設し、相談業務をスタート。群馬も設置したが、相談対応は夏頃に始める予定だ。和歌山、広島、鹿児島、沖縄も2023年度中に整備を終える方針で、一応は全国で支援拠点が整うことになる。
▽支援センター8カ所の県もあれば1カ所の県も、広がる支援格差 ケア児の支援については、国会議員や民間団体などが月に1回ほど話し合う会議がある。2015年に設立された「永田町子ども未来会議」だ。東京都内で開かれ、最近はオンラインで議論の様子を配信している。3月には、三重大病院小児・AYAがんトータルケアセンターの岩本彰太郎氏が講演した。岩本氏は、三重県が昨年4月に開設したケア児支援センターでセンター長を務めている。 三重では過去10年にわたり支援体制を整えてきた。その成果として、県内には計8カ所の支援センターがある。支援に携わる人への助言や、ホームページで利用可能なサービスを探せる「見える化」にも取り組んでいる。岩本氏は「『チーム三重』が出来上がった。ケア児が成人になる将来も見据え、生涯にわたり伴走する体制をつくるのが使命だ」と語った。 一方、手探りの支援センターも多い。昨年の厚生労働省調査では、管内のケア児への支援状況を把握しているセンターは6割、関係機関の職員に研修をしているのは4割にとどまった。また、大半の都道府県でセンターは1~2カ所しかなかった。利用者からは「センター数が少ないと、広い地域をカバーできない」との声も出ている。