「学び」=「登山」?…IQ180の若き天才が「全人類」に伝えたい「学び続けること」の重要性
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第11回 『「IQ180の天才」が「若者」に教えたい! 意外と知らない効果バツグンの「学習法」』より続く
学びとは山登りのようなもの
年を重ねた世代の人々は学ぶことについて、少々ゆっくりです。 しかし、誰にでもそれぞれのペースがあります。食べる速さ、走る速さ、話す速さ、それは一人ひとり異なって当然のことであり、学ぶ速さについても同じことです。 そして、ここで思い出してほしいのは、誰もが速く学ばなければいけないわけでもないということ。自分のペースで学べばいいのです。 台湾には玉山のような標高3952mを誇るような山もあれば、台湾原住民が暮らす脊梁山脈もあります。なだらかな山でハイキングを楽しむにしろ、本格的な登山に挑戦するにしろ、山登りは競争ではありません。 学ぶことは山登りと同じで、大切なのは登る過程を楽しむことです。 競争しながら山頂を目指したとしたら、疲れ果てるだけで楽しむことはできないでしょう。 忘れずにいたいことは「自分の人生の中で実際に学べることは何か?」と現実的に考える姿勢です。 特にもう若くない世代は、これまで自分が学んできたことに最大限に寄り添えるものは何かを見極めるといいでしょう。そのとき、得意ではないことがあったとしても、この世界にはそれが得意な人がいます。そういう人と仲間になって、競争するのではなく協力していく。それがより良きことです。
現実は常にアップデートされる
いずれにせよ、生涯にわたって大切なのは、「学び続けよう」という思いを学ぶこと。「では、具体的に何を学べばいいのか?」という質問に対して、以前はスタンダードな回答がありました。ある時期は語学だったかもしれませんし、ある時期はプログラミングだったのかもしれません。 しかし今は、新しい考え方が刻々と生まれており、生まれるごとにスタンダードな回答では間に合わなくなりました。 それでも人は、それぞれに異なる現実に対峙していかなければなりません。 次々に立ちあらわれる問題については、その人の頭脳と心をもって解決していくしかありません。なぜなら、現実は常に更新されるものです。人間の歴史が始まった瞬間から、現実はずっとアップデートされ続けてきました。 すなわち、私たちの常識、普通、当たり前のうちのいくつかは、仮に「最新」であっても、これからひらけていく未来を考えれば「すでに古いもの」です。 人類文明の中における産業文明の時代はとても短く、そこで「スタンダードな回答」とされていたものが、次々と危ういものになってきています。 そうであれば、私たちは産業革命前の時代に立ち返って、機械の中の歯車のひとつになるのではなく、「人生を通して学ぶ」という本質に戻らなければなりません。「歯車のひとつ」のような表現が使われるようになって、まだ500年も経っていないのですから。 『スマホで国家を「監視」…台湾で実施されている常識はずれな“透明性”を生み出す「テクノロジー」』へ続く
語り)オードリー・タン