エチゼンクラゲ再び 福島県沖で15年ぶり確認、高水温影響か
福島県沖に15年ぶりに大型クラゲ「エチゼンクラゲ」が出現し、底引き網漁が一部遅延するなどの影響が出ている。漁業情報サービスセンター(東京都)によると発生量が多く、高い海水温を要因とし、津軽海峡を通って本県沖を含む東日本の太平洋側に流れ着いたと考えられる。国内での発見数は9月30日時点で11万匹となっており、2009年以降では過去3番目に多くなっている。 同センターによると、大型クラゲは中国沿岸で発生し、日本の沿岸に流れてくる。海流に乗って太平洋側まで流れ着くが、例年は岩手県付近までの南下だった。本県沖で今年初めて確認されたのは9月25日で、小型と沖合の底引き網漁で崩れた状態で見つかった。その後も発見され、今月9日までに計10匹ほどが相馬やいわき沖で確認された。 同センターの担当者は、「今年は発生量が多いことや、水温が比較的高くクラゲの活動力が維持されているため福島県沖や千葉県沖まで流れ着いたのではないか」と推測する。だが、「発生時期が例年よりも早かったことや今後は水温が下がることを踏まえると、11~12月ごろには姿が見られなくなる可能性もある」とした。 09年9月30日時点では、100万匹を超えるエチゼンクラゲが日本近海に出現した。本県沖でも多く確認されており、クラゲの重みで網が破れる漁具破壊を中心とした被害があった。
エチゼンクラゲ
福島県水産海洋研究センターによると、傘の大きさが最大2メートル、重さ150キロにもなる世界最大級のクラゲ。漁具被害のほかに、過去にはクラゲの毒が漁師の手や目に入り健康被害が起きた事例や、毒で魚が死んで売り物にならなくなるケースが発生している。
底引き網漁、被害拡大懸念
県内の漁業者は操業へのさらなる影響を懸念している。「今年は漁師仲間の中で、網に入ったという話を数件聞いている。大きな被害が出なければ良いんだが」。いわき市の沖合底引き網船「第23常正丸(じょうしょうまる)」の漁労長矢吹正美さん(61)は表情を曇らせる。 矢吹さんは15年前、実際にエチゼンクラゲが漁の網にかかったことがあり、「大きくて重く、他の魚が入らなくなってしまった。網から捨てるにも引っ張り上げるのがやっとだった」と当時の様子を振り返った。
福島民友新聞社