倖田來未、マイク1本で勝負したい「歌だけでの倖田來未も受け入れてもらいたい」歌手を志した原点を胸に
歌手の倖田來未(42)が12月6日にデビュー25周年を迎える。派手なパフォーマンスやセクシーな衣装から“エロかっこいい”として一世を風靡(ふうび)したが、最近は歌そのものへの思いが強くなっているという。音楽に対する考えとともに、1日から開催する自身初のランチ&ディナーショーツアーへの意気込みも赤裸々に語った。(松下 大樹) 【写真】倖田來未、イケメン夫&長男と家族3ショット 取材は都心から少し離れたスタジオで行われた。「すいませ~ん。遠いところまで、ほんまに」。トレードマークの一つである関西弁が部屋中に響き渡る。同じ京都で育った記者にとっては、その話しぶりに居心地の良さを感じた。 今でこそ倖田來未=関西弁のイメージが浸透しているが、「デビュー当時は『横柄に聞こえるから標準語に直した方が良い』って言われてたんです」と告白。声のボリュームを落としながら「だから私、3年くらいMCしたらあかんかってん」と明かした。 周囲から冷たい視線を注がれることもあったというが「関西人のスタッフの方に『謙虚に言いたいこと言いなさい。これ忘れへんかったら大丈夫やから。思いっきり下に潜り込んでしゃべれ』って言われて」とアドバイスを受けてからはありのままを貫く。記者が「~して“はる”(京都弁で使われる尊敬の表現)って付けといたら全て丸く収まりますよね」と話すと、大きな笑い声を上げながら「そうそう、『~してはる』言うてたら大丈夫や思います!」と深くうなずいた。 そんな関西弁が純度100%だったであろう18歳でデビューしてから、12月6日で25周年を迎える。「毎日が楽しく過ごせてこられた。あっという間だったなと思ってます」。早口気味に「今42歳なんですけど、42歳って言われてもまだ23歳くらいじゃなかったっけ?みたいな」と時の流れの早さに驚きを隠せない。 最初に自身の名前を広めたのは、意外にも海外だった。2枚目シングル「Trust Your Love」が米国の音楽雑誌のランキングで1位を獲得するなど大ヒット。2002年に本紙がインタビューした記事では、「米国で最も有名になった日本人アーティスト」として紹介されていた。 そのまま日本での活躍が期待されたものの「海外との評価が全然違った」と及ばず。所属事務所の「歌の実力を上げてほしい」との願いから各地のクラブを歌い回った。 懸命な下積みが実を結び、米国でのブレイクから約3年後となる04年に「キューティーハニー」が日本で大ヒット。翌年には、「Butterfly」で日本レコード大賞を受賞し、NHK紅白歌合戦への初出場も果たした。 世間に名が知れ渡るようになると、自身の姿勢にも変化が起きた。「皆さんに良い評価をもらってた時期は尖(とが)ってたと思う」。長く活躍し続けるために「やりたいことを妥協しちゃうとそれが全部(悪い方向へ)つながってくる」と張り詰めた日々を送った。 それでも、結婚や出産を経験したことで「一回、丸なった」と振り返る。周囲への優しさも意識し始め「自分の中で『しゃーない(仕方がない)な』って言葉を覚えた」と穏便な暮らしを優先するようになった。 しかし、間髪を入れず「ただ―」と切り込んだ。「丸くなりすぎると、つまらなくなってくるんですよ」。目つきがキリッと鋭くなった。「ルーチン化して型にはまるのが嫌で、もう一回尖ってやろうかなと。失敗を恐れずにどんどんチャレンジして、ワクワクすることがしたい」。自分自身への刺激を求めていた。 その第一歩となるのが、1日からスタートする自身初のランチ&ディナーショーツアー。いつものコンサートのような派手なダンスや演出を抑え、歌にフォーカスした時間を届ける予定となっている。初めての試みに「ドキドキなんです~」とおどけた口調で話した一方で、真面目なトーンで強い覚悟もにじませた。 「マイク一本で勝負できるアーティストになりたい」 セクシーな衣装を身にまとい、華やかなダンスを見せつける。倖田來未と言えばそんなイメージも根強いが、歌手人生の原点は違う。「もともとはDREAMS COME TRUEを見てこんなふうに背中を押せるような、愛を伝えるようなアーティストになりたいって言って歌手になった。歌がうまい人でいたいし、心を揺さぶるボーカリストでいたい」。自分に言い聞かせるように言葉を紡いだ。 その思いは行動に表れていた。キャリアを重ねていくうちに新作を出すペースが落ちるアーティストが多い中で、必ず1年に1度は新曲やアルバムを制作。「倖田來未の音楽は常にアップデートしているんだぞってところを作品で見せていきたい」。数々のヒット作を生み出してきたが、そこにとどまるつもりは全くなかった。 派手なパフォーマンスに目が行きがちだが、歌そのものに対する思いは誰にも負けていない。「42歳になってこんなに踊るって思ってなかったけど、今後いくつまで踊れるかわからないじゃないですか。歌だけでの倖田來未も受け入れてもらいたい」。“エロかっこいい”というキャッチフレーズも付けられたが「出る杭(くい)にならないと目立たないということで大胆な表現方法をしていたけど、ボーカリストのプライド、意地として倖田來未の音楽もすてきなんだよというのを伝えたい」と本心をのぞかせた。 だからこそ、今回のディナーショーにかける思いは普段のコンサートと比べてもひときわ強い。「すてきな音楽を歌うことが使命。クルクル空中で回る演出してほしいなとか、MCで山ほどしゃべってほしいなとか、そういうふうに言われないパフォーマンスをしなきゃいけない」。背筋を伸ばし、最後は京都人らしくはんなりとした口調で決意を示した。「一日でも長く、皆さんに音楽を届けられるアーティストでいられたらいいなと思っております」。歌い手を志した原点を胸に刻み、届けたい思いを自分の歌声に注いでいく。 ◆倖田 來未(こうだ・くみ)1982年11月13日、京都府生まれ。42歳。2000年、「TAKE BACK」でデビュー。04年、映画「キューティーハニー」の主題歌となった「LOVE&HONEY」でブレイク。05年、「Butterfly」で日本レコード大賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場(通算8回)。11年、4人組(当時)バンド「BACK―ON」のボーカル&ギタリスト、KENJI03と結婚。12年、長男を出産。血液型A。 ◆ランチ&ディーナーショー(6都市10公演) ▼1日 北海道・京王プラザホテル札幌 ▼17日 福岡・ホテル日航福岡(夜のみ) ▼19日 広島・リーガロイヤルホテル広島 ▼21日 大阪・リーガロイヤルホテル大阪 ▼22日 愛知・名古屋観光ホテル ▼27日 東京・ホテルニューオータニ(夜のみ)
報知新聞社