手順を踏まない「身体拘束」や「どなり」、増える施設での高齢者虐待
佐賀県は、2023年度の65歳以上の高齢者に対する虐待状況を公表した。施設職員による虐待と判断された件数が16件(前年度比8件増)、相談・通報件数が39件(同12件増)に上り、調査を始めた06年度以降でともに最多となった。必要な手順を踏まない身体拘束によるものが多く、県は「施設職員に正しい知識を身につけてもらうことが必要」と話している。
調査は、同年に施行された高齢者虐待防止法の規定に基づいて実施。23年度は、70人が被虐待者として認定された。虐待の種類では、複数の種類に該当するものもあるが、身体的虐待が69人で最も多く、どなるなどの心理的虐待、手の届かない所にナースコールを置くなどの介護等放棄がそれぞれ6人だった。
このうち身体的虐待については、顔や腹をたたくなどのケースがあった一方、8割超を占める59人が、ベッドの四辺を柵で囲んだり、着脱しにくい服を着せたりして自由な行動を制限する身体拘束によるものだった。
こうした身体拘束は、切迫性を伴うなど必要な要件を満たす際には例外的に認められる。しかし、今回虐待と判断されたものでは、職員間で十分に検討し、議論の記録を取るといった手続きが踏まれていなかったという。
また、家族や親族による虐待の相談・通報件数は114件(同11件減)、虐待と判断された件数は33件(同15件減)だった。
県長寿社会課の担当者は、職員による虐待の通報件数などが過去最多だったことについて「高齢者虐待に関する認識の高まりが早期発見につながり、虐待の重篤化を防いでいる」と分析。一方、「研修の参加を促すなど職員の認識不足を解消し、虐待を減らせるよう取り組みを強化したい」としている。