上司が喜ぶように「予習」をしてくる若者たちに、どう対応すべきか?
社員の主体性・自律性の向上を促し、定着率を高めるなどの狙いから、多くの企業で「1on1ミーティング」(1on1)が導入されている。しかし、効果的に実施できている企業は一握りで、1on1を実施しているにもかかわらず、何も語らぬまま会社を辞めていく若者が後を絶たない。なぜ、1on1はうまくいかないのか? 今の若者は何を考えているのか・・・? 本連載は、1on1を核とした世代間コミュニケーションの問題を切り口に、職場の若者を多面的に分析した『静かに退職する若者たち』(金間大介著/PHP研究所)から、内容の一部を抜粋・再編集。若者世代の部下・後輩との1on1の前に知っておくべきことについて解説する。 第6回は〈回避志向〉タイプの若者の深層心理について解説する。 T6〈回避志向〉の深層心理「逃げられない状況を作っての探りの場じゃないでしょうか」 詳細の深層心理解説も、これでラストだ。アンカーの資格を持つのは、当然〈回避志向〉の持ち主だ。 先の〈表面志向〉もなかなかの手強さだったが、〈回避志向〉はその上を行く印象すらある。 彼らの1on1に対する印象と評価は次の通り。 上司のなかでの自分の評価(キャラ)が確定する場 十分な「予習」をして臨む場 忙しさをアピールする場 がんばります風の姿勢を示す場 期待値調整の場 このタイプは、「いい子症候群」成分が最も多めの人たちだ。 基本的な行動原理や心理的特徴も、僕がこれまで提唱してきた「いい子症候群の若者たち」そのものと言える。 彼らはとにかく回避動機が強く、言動もディフェンシブだ。 彼らにとって個別面談とは、要するに上司が自分を評価する場だ。できないやつ、使えないやつと思われるのは避けなければならない。 かといって、意識高いやつ、と思われてもやっかいだ。そんなふうに目をつけられてしまったら、次からどんなに重たい仕事を振られるかわかったもんじゃない。 狙うは、いつもの「平均値」だ。上にも下にも出すぎず、真ん中でいること。これ以上の安定はない。 〈回避志向〉の若者たちは、その「目標」を達成すべく、十分な「予習」をする。 若手の発言に対して上司や先輩はどういうリアクションをするのか、それを踏まえて自分はどう行動するのが正解なのかを、つねに考えている。上司の皆さんが喜ぶだろう言葉、姿勢、態度などは、すべて予習対象項目だ。 それでは、どうやって予習しているのか。 そこには、手順やメソッドみたいなものがあるのか。 この点に確固たる法則があるわけではないが、ある程度、上司たちを観察すれば想定することが可能だ。 同期が上司に放った言葉に対する上司の反応はどうだったか。上司のお願いを断った部下に対する上司の態度に変化はあったか。 そうやって収集したデータを分析することで自己を守る。やる気のないやつだと思われないように、かつ、やる気のあるやつだと思われないように、発言、行動、姿勢を繕(つくろ)う。 これに、今まで培った経験を活かせば完璧だ。例えば、さも主体的に見える行動、さも優等生に見える行動は学校生活でも学んできた。 あとは、当日の案件次第で対応を少しずつ修正するだけだ。