UBSバンカーが不満あらわ、気候ファイナンス巡る世界的対立を露呈
(ブルームバーグ): スイスの大手銀行UBSグループのバンカーであるジャドソン・バーキー氏は不満を抑えようとはしなかった。
2月上旬のある日、霞が関にある金融庁で開かれた会議にバーキー氏はWebExを通じて参加した。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)をはじめとする世界各国の公的機関の代表が集まった非公開の会議は、規制当局が主要な市場参加者に対し、経済を高炭素資産から移行させる上で、複雑化する規制やガイドラインにどのように対処しているかを尋ねる「チェックイン」と銘打たれていた。
ともすれば、退屈になりかねなかった会議は、UBSでエンゲージメント・規制戦略グループ責任者を務めるバーキー氏が口を挟むと、予想外の展開を見せた。世界の平均気温が産業革命以前と比較してセ氏2.8度上昇する勢いで地球温暖化が進んでいる現状に対し、それを1.5度以内に抑える目標のために、金融業界は融資や投資、資本市場ポートフォリオに至るまで協調を求められていると指摘した。
結論はこうだ。世界の大手各行は、無謀なペースで世界各地の大勢の顧客の切り捨てに直ちに着手するとともに、地球上の広大な地域にわたって、環境汚染の根源となる低質燃料への依存度が高い経済を混乱に陥れない限り、環境規制の理想に沿うことは不可能だ。ジレンマに直面した銀行業界は静かに気候変動への野心的な取り組みを解消しつつある。
バーキー氏は、「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」に暗に触れ、「銀行はプラネット・アース(地球)上で生きて融資を行っている。プラネットNGFS上ではない」と熱弁を振るった。金融安定理事会(FSB)が主催した同会議の詳細は部外秘のため、匿名を条件に複数の出席者が明らかにした。バーキー氏は会議への参加を確認したものの、それ以上を語ることは避けた。
UBSのバンカーが爆発させた不満に対し、参加者から目立った反論もなく、数兆ドル規模のトランジション・ファイナンス(脱炭素化に向け長期的な戦略に基づいて温室効果ガス削減に取り組む企業に資金供給する新しい金融手法)計画に亀裂が生じつつあることを浮き彫りにした。同時に世界の銀行業界で急速に議論が活発化している問題の一つが突きつけられた形となった。