シクラメンが美しい理由。花が中心に集まって咲くのは、なぜ?
クリスマス、お正月と楽しいイベントが続くこれからのシーズン。お部屋の彩りにぴったりなのが、シクラメンなどをはじめとする華やかでカラフルな鉢花です。『趣味の園芸』12月号の「部屋がパッ!と華やぐ 冬の鉢花オールスターズ」では、全国津々浦々の生産者さんを訪れ、数々の銘花を見いだしてきた塩見亮一さんが今、自信をもっておすすめしたい鉢花を厳選。見事な花が生まれるまでのエピソードとともに、美しい銘花の数々を紹介してもらいました。 みんなのシクラメンの写真
写真のシクラメンは、「ホワイト クラウド イン ザ ブルースカイ」。 半世紀にわたりシクラメンをつくり続け、特に花弁の端に色帯が入る「覆輪咲き」を追求してきた作出者が2010年代後半に作り出した、純白と紫色の絶妙なコントラストが美しいクラメンです。 幾多の花を見てきた塩見さんが「紫に白の覆輪はあっても、白の花弁を紫色が幅広く縁取る花は初めて見ました。全国にはまだ自分の知らない花がたくさんあり、生産者さんがたゆまぬ試行錯誤をされている」と感嘆した逸品。青空の中の白い雲というネーミングも絶妙です。
冬に園芸店に並ぶシクラメンは、写真のように花が中心に集まって美しく咲いています。なぜでしょう? その理由は、生産農家が膨大な時間と手間ひまをかけているからなのです。 その作業の一端をご紹介。
葉組み
「葉組み」と呼ばれる作業。花茎を株の中心に寄せ、葉は広がるように随時下の葉と絡ませて組み替え、360度きれいなスカート状に整えていくシクラメン特有の仕立て方。一株一株を手作業で、通常は8月のお盆過ぎから出荷まで3~4回。上の写真の作出者は生産している株に対して、それぞれ6~8回も行う。葉組みをすると、根元に日が当たり、新芽の生育を促し葉数がふえる。
球根に日光を当てる
葉組みをした上にリングをのせて、葉が戻らないように固定した様子。 株の中心部にある球根に光が当たるように葉の上にワイヤーリングをのせて広げ、新しい葉や花芽の成長を促す。
塩見亮一(しおみ・りょういち) 花き商品販売会社 生花店で花き商品の販売や商品企画、花の生産地の開拓を担当。全国各地の生産者を訪ね歩き、つくり手の思いを消費者に伝える橋渡し役を心がけている。 『趣味の園芸』2023年12月号「部屋がパッ!と華やぐ 冬の鉢花オールスターズ」より