柿澤勇人、全身全霊で挑む『ハムレット』。演出・吉田鋼太郎からは3年前に「柿澤はハムレットが出来る」
舞台でハムレット役を演じることに
2024年、柿澤さんは、『ジキル&ハイド』『スクールオブロック』で第31回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した。 「本当にうれしかったです。芝居って正解はないと言われていて。でも正解はないようであると思うんですけど、何点というのもないですからね。励みにもなるし、今までやってきたことは間違っていなかったんだと自信にもなりました」 柿澤さんは、三谷幸喜さんが3年半ぶりに書き下ろし演出した舞台『オデッサ』の大千穐楽を3月3日(日)に終えたばかり。5月7日(火)からは、吉田鋼太郎さんが演出を務める舞台『ハムレット』でハムレットを演じる。 シェイクスピア作品を深く愛する吉田鋼太郎さんが「シェイクスピア作品の中でも最高傑作」という『ハムレット』で演出を担当。さらにハムレットの父を毒殺し、母と再婚してデンマーク国王となるクローディアス役で出演。吉田さんは、自ら上演台本を手がけることで、より理解しやすいシェイクスピア演劇を届けるという。 ――吉田鋼太郎さんは、3年前に舞台で共演されたときに、柿澤さんをハムレット役にと決めてらしたそうですね。 「はい。3年前に僕に『柿澤はハムレットができる』って言ってくださって。僕も『ぜひやらせてほしい!!』とお伝えしましたが、こんな未来になるとはまったく思ってなかったです(笑)」 ――やりたいと思ったことが実現するというのは、すばらしいじゃないですか。 「大変ですよ、本当に。心からやりたいことだけれども、実際にそれが迫ってくると、目の前に来ると恐怖です。寝られなくなりますから」 ――それをどういう風にして乗り越えるのですか。 「乗り越える術(すべ)はないです。誰か教えてくれないですかね(笑)。今と比べて劇団四季時代のはじめの頃は、とにかく楽しかったし元気でした。それに比べたらどんどん、どんどん怖くなっていって、もう板の上には立てないなんて思うこともあります」 ――今でもですか。 「はい。舞台は怖いですね。なので日々すごいことをやっているんだなって思いますよ。倒れられないし、やり直しもきかないし…。もちろん映像も大変ですが、全然別物ですよね」 ――制作発表会見で吉田鋼太郎さんの熱い思いが伝わってきましたね。 「そうですね。相当気合いが入っていますね。蜷川さんっぽくなってきたな、蜷川さんと似ているなあって(笑)」 ――好きなお酒も控えていると伺いましたが、気分転換とかリフレッシュはどのようにされるのですか。 「実は、最近はほとんど飲めていないんです。だから、癒しを求めてプールで泳いだり、サウナに行ったり…みたいな感じです」 ――何かしてみたいことはありますか。 「何かするにしても『ハムレット』が終わってからかな。それまではちょっと考えられないので、4カ月ぐらい先になりますね(笑)。僕は結構いつも悩んでいるし、何かあるたびに落ち込むので、『ハムレット』が終わるまでは気が抜けない感じになると思います。 僕の役者としての大きな分岐点になるのがここだと思うので、『ハムレット』の先のことはまったく考えてないです。まずはこれを乗り越えなければ」 凛とした佇まいと身のこなしが美しい。悲劇の人というイメージのハムレットだが、ポスターでは満面の笑顔。「生半可な気持ちでできるものではありません。全身全霊で挑みます」と話す柿澤さん。どんな『ハムレット』になるのか楽しみ。(津島令子) ヘアメイク:大和田一美 スタイリスト:ゴウダアツコ