「大気に国境はない」 ひまわり8号・初の国際協力の取り組み実施
「ひまわりリクエスト」 第1号はオーストラリア
8号、9号の特徴である高頻度の観測と、カラー化など画像の種類の増加を生かし、国内では観測地点の少ない洋上の台風の監視や、集中豪雨を発生させる急激に発達する積乱雲を以前より早く検出するなど、防災の分野で効果を発揮してきている。特に台風については、2.5分毎の観測によるデータなどを活用し、予測精度の向上が進んできている。 ただ、このような台風の観測は台風シーズンはフル稼働に近い状態になるが、台風の発生が減る冬になると必要性が低下し、これに伴ってひまわりの能力にも余力が生まれることになる。このため、気象庁は世界気象機関(WMO)と協力して検討を進め、外国の気象機関からのリクエストを受けて2.5分毎の観測を実施する「ひまわりリクエスト」の制度を今年1月からスタート。今回のオーストラリアが制度活用の第1号となった。
海外では森林火災や洪水などの被害把握にも活用
一定の範囲の2.5分毎の観測を実施する「ひまわりリクエスト」の制度に登録しているのは、ロシア、香港、ネパール、タイ、マレーシア、フィジー、ソロモン諸島、オーストラリア、ニュージーランドの9の国、地域の気象機関。ただ、通常の10分毎の観測データは、ひまわり8号がカバーしている領域に位置する約30の国・地域(人口合計約22億人)が利用できるようになっている。 気象庁によると、東南アジアの国々の中には、気象レーダーの整備が進んでいないところもあり、そうした国々ではレーダーの代わりとして、ひまわりのデータを気象状況の把握に役立てているところもある。また、気象予報だけでなく、広大な国土で発生した森林火災や洪水などの被害の実態把握にも活用されるケースがあるという。 気象庁気象衛星課の吉田良・技術専門官は「日本では台風シーズンが終わりに近づいているが、これから南半球ではサイクロンの季節となる。今回実施したオーストラリアでの機動観測をきっかけに、今後もひまわりを活用した国際協力を一層進めていきたいと考えている」と話している。 (取材・文:飯田和樹)