【解説】鳥島近海で発見された「軽石」 最近の火山活動による可能性が――原因不明“ナゾの津波”との関連は?
■トカラ列島で相次ぐ地震 震源付近では今年5月にも群発地震
鹿児島県のトカラ列島近海を震源とする地震が相次いでいます。この期間の最大震度は4です。今回の地震活動、震源は口之島や中之島の近くです。今年9月にも短期間に地震活動がまとまっておきていて、その時の震源は悪石島の南、小宝島の近くでした。 今回、活動が活発なエリアでは今年5月にも地震が頻発していて、当時は最大震度5弱の地震もおきています。震源が浅い地震のため、地震の規模が少し大きくなると、近くの島では強い揺れになることもあるので注意が必要です。
■鳥島近海で発見・採取された「軽石」 最近の火山活動によるものか?
10月下旬に気象庁の観測船が鳥島近海で採取した「軽石」ですが、東大地震研究所や産業技術総合研究所が分析をおこないました。 「軽石」には、長く浮遊していると付く可能性がある貝など海の生物の付着が少なかったこと、また、角張っている石が多いことなどから、最近の火山活動によってできた「新しい軽石」だったことが分かりました。さらに化学組成を調べると、鳥島を含む火山帯周辺に分布する火山岩の特徴「流紋岩」と類似しているということです。
■火山ごとに特徴が――
2021年、全国の海岸に漂着して大きな影響が出たのは、小笠原諸島の海底火山・福徳岡ノ場の軽石です。今回、鳥島近海で見つかった軽石と比較すると、色も異なっています。火山ごとにマグマの特徴が違うため、含まれる成分も異なり、軽石を分析することで、どこの火山のものか、特定につながることもあります。
■鳥島近海で見つかった「軽石」 その正体と、10月のナゾの津波の因果関係は?
今回分析された軽石は、鳥島の西側の海域に分布する岩石の特徴に似ていることが分かりました。また、この海域の近くには10月に原因不明の津波が発生し地震活動が相次いだエリアがあります。 一方で、気象庁によりますと、小笠原諸島で最近、火山活動が活発な「福徳岡ノ場」や「硫黄島」「海徳海山」の噴出物とは異なるとしています。引き続き、「軽石」と10月におきた津波の原因との因果関係について調査が進められています。 そんな中、国の研究機関も緊急の調査を始めました。JAMSTEC=海洋研究開発機構が11月9日から研究船「かいめい」を鳥島近海に派遣しています。目的は海底の地形データの収集と、地滑りの痕跡や海底の地形変動の把握、さらに海底地震計を設置して、詳しい震源を調べる方針です。