長崎の「被爆体験者」救済事業始まる 医療費を助成、市に申請202件
国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済に向け、被爆者と同等の医療費を助成する国の新事業が12月から始まった。事業を委託された長崎市で2日、窓口での申請受け付けが始まり、202件の申請があった。 体験者への医療費助成はこれまで、被爆体験が原因の精神疾患と合併症、7種類のがんに限られていた。新事業では従来の精神科受診要件を撤廃。造血機能や腎臓機能など11種類の障害を伴う疾病にかかっている人を対象に、遺伝性や先天性などを除き、ほぼ全ての病気の医療費を助成する。原爆投下時に胎児だった体験者も対象に含めた。 一方、従来通り被爆者とは認めず被爆者健康手帳は交付しない。体験者は、被爆者に支給される健康管理手当などの各種手当を受給できない。 対象疾病にかかっている体験者は、診断書を添付して受給者証の交付を申請する。市によると、早ければ12月下旬にも順次、受給者証が交付される見込み。市原爆被爆対策部調査課には、申請方法などについての問い合わせが寄せられている。同課は「一人一人の状況に応じ、丁寧に説明をしたい」としている。 厚生労働省によると、3月末時点の体験者は約6300人。岸田文雄首相(当時)は9月、医療費助成を拡大すると発表したが、被爆者認定を求める体験者は反発している。県保険医協会は、体験者が診断書を用意するのに約1万円が必要になるため、費用免除を求める要望書を11月、県市に提出した。