「サマソニ」にも出演する2024年を代表するシンガーTyla(タイラ) その魅力をビジュアル面から分析 連載:ポップスター・トレンド考察
そして、その儚さはビジュアル面にも表れている。アートワークで度々使われる海や水といったみずみずしいイメージ、水が滴るような透明感をたたえるツヤ感いっぱいのメイク。極めつきは、「メットガラ2024」で話題をさらった「バルマン(BALMAIN)」の“砂のドレス”だろう。クリスタルを混ぜた3種の砂で覆われた衣装は、肩にも砂をあしらっていた。その色合いとテクスチャーはタイラのヘルシーでオーガニックな魅力を引き立て、今年のメットガラで最大の賛辞を呼んだ。
水と砂。それらは、儚さの象徴だ。2000年前後のノスタルジーと接続されることで、儚さはより一層の言葉にならない感傷を引き起こす。タイラの表現は、ボーダレスなY2K感覚による親近感、偶像的イメージによる象徴性、それらが衝突しながらも違和感なく同居する中で、儚さを漂わせつつ消えてゆく刹那の1ページを描いている。“タイラ・バイブス”とは、一回性と喪失感が詰まった、私たちが夏に対して抱くような魅力そのものなのだ。