「サマソニ」にも出演する2024年を代表するシンガーTyla(タイラ) その魅力をビジュアル面から分析 連載:ポップスター・トレンド考察
偶像的なビーナス・イメージは昨今のファッショントレンドをけん引する大きな潮流だが、タイラはその役割を一手に引き受けているような印象がある。まず何よりも、アルバム「TYLA」のアートワークで見せたアーチド・バックな姿が思い浮ぶ。他にもシューティングでは度々官能的なポージングを見せ、往年のビヨンセを想起させるような頭の後ろで手を組む仕草がアイコニック。もちろん、くびれが強調されるダンスも魅力的だ。衣装においても、ボディーを神秘的に包み込むドレープやフリンジ、シアーなアイテムを多用し、女神のようなムードを醸し出す。「メットガラ2024」ではゴールド~ブロンズの色味で構成されたメイクアップも注目を集めたが、そういった高貴なイメージがタイラの偶像的美しさを作っている。さらに、楽曲におけるR&Bのルーツを感じさせる歌唱法も、そのようなイメージを増幅させる。
平たく言ってしまえば、「ボーダレスなY2K感覚」と「偶像的なビーナス・イメージ」は、キュート&カジュアルとエレガント&フェミニン、とも形容できるだろう。つまり、本来なら相反しがちな両者が同居しているのがタイラの魅力であり、しかもそれらがアンビバレントにならずトータルで見事にまとまっているのがさすがだ。
3.軽やかさ、エモーションをかき立てる儚さ
キュート&カジュアルでありながらエレガント&フェミニンでもある――しかし、タイラの魅力はそれだけではない。「Water」を筆頭にすでに昨年からクラブフロアを揺らしているナンバーの数々は、ベッドルームで聴いても気持ちよい清涼感と軽快さを備えている。そして、その心地よさは、同時にどこか儚さすらも感じさせる。ログドラムとコーラスの間をたゆたいながら、物憂げに歌うタイラの歌はエモーションをかき立て、ふわふわした浮遊感を生むのだ。ピンクパンサレス(PINKPANTHERESS)やエリカ・デ・カシエール(Erika De Casier)など、アンニュイで儚さを喚起するサウンドがトレンドをけん引している20年代の音楽シーンにおいて、ジャンルは違えど、タイラも近いムードを感じさせる。