バスケ全国高校選手権 和歌山南陵は経営難で部員5人 朝食が菓子パン1個だけの時期も
バスケットボールの全国高校選手権は23日に開幕する。男子で4大会連続4度目出場の和歌山南陵(和歌山)は部員が3年生の5人だけ。二宮有志主将は「3年間の集大成。南陵らしい、走らないバスケを40分間継続して、目の前の試合に勝ちたい」と力を込めた。ケガやファウルアウト(1選手が5回のファウルをしての退場)の許されない状況で、県立長崎工(長崎)と対戦する1回戦突破を目指す。 才能ある選手が集まっていたが、学校が深刻な経営難に陥り、教員への給料未払いや公共料金の滞納など問題が多発。教員が授業をボイコットするなど混乱に見舞われ、不安を抱いた生徒が大量に転校した。和歌山県から新入生の募集も禁止され、40人以上いたバスケ部員が今季は6人にまで減少。寮の朝食が菓子パン1個だけの生活が約2カ月も続いた。生徒の家族からの食事面の支援や、チーム運営費をクラウドファンディングで募るなどして苦境を乗り越えてきた。 紅白戦もできない状況で、8月の全国総体では1回戦を突破。選手権の県大会も勝ち抜いたが、その後、身長2メートル5のナイジェリア人留学生が去り、メンバーは5人になった。チームは消耗を抑えるため、速攻は極力せずに時間をかけて攻める“走らないバスケ”を掲げる。1年間続けてきたスタイルの完成度は高いが、和中裕輔監督は「6人と5人では天と地の差。1人休めていたのが、全員が40分コートに立ち続けないといけない」と厳しい表情を浮かべた。 学校は行政からの生徒の募集停止の命令が解除され、新年度に入学する生徒の募集を開始。今季限りでチームを去る和中監督の後任も内定しているが、選手が集まる保証はなく、バスケ部が存続するかは不透明だ。二宮主将は「ここで3年間バスケをやりきると決めて入学した。いろいろと問題はあったけど、バスケが続けられる状況で辞めるのは逃げだという思いがあったので、続けてきた」と苦難の日々を振り返った。前代未聞の5人の戦いが幕を開ける。