福島県いわき市・清水敏男市長の会見(全文1)復興に向けてのさまざまな課題
原発事故による風評被害も大きい
また原発事故による風評被害も大きなものがあります。農林水産業につきましても、この風評によりましてなかなかものが売れないという状況が続いておりますし、水産業に関しては試験操業ということで、震災前のまだ水揚げ高が5%程度であります。観光業についても暗い影を落としておりまして、震災前、平成22年には約1,000万人を超えていた観光交流人口が震災直後、平成23年は368万人まで落ち込み、平成26年では約775万と7割程度の回復にとどまっているのが現状です。復興支援を目的とした団体客はたくさん来ておりますけども、いまだ個人やファミリー層につきましては、来ていただけないような状況が続いております。ぜひ多くの方にいわき市にまずは訪れていただいて、自分の目で見て感じたことを地元に帰って発信していただけることが、風評被害の払拭にもつながっていくものと考えております。 ほかにも課題がございます。例えば原発事故以前から医師の確保につきましては、医師不足ということで深刻な状況にありましたが、原発事故後はなおさら医師の確保には苦慮しているところでございます。そんな中でも大学に、福島県立医科大学に寄附講座というものを開設いたしまして、産婦人科の医師を3名、整形外科の医師を3名、招聘したところでございますが、寄附講座というのにはお金が掛かります。これについても自治体としては非常に苦労しているところでございます。 雇用につきましてはいま現在は国や県の手厚い企業立地補助金等によりまして、求人等も非常に好調ではありますが、これもいつまで続くかというのは分かりません。今のうちから新しい産業、風力とか太陽光とか再生可能エネルギー等の産業を活性化させるべく、今、努力をしているところでございます。 住宅環境も逼迫しておりまして、津波被災を受けた方、あるいは先ほどもいいましたが原発事故により2万4,000人の方がいわき市に移り住んでいるという中、住居を求める方が非常に多くなっておりまして、土地の高騰を招いているところです。これにつきましては行政としても市街化調整区域における地区計画制度の活用、調整区域の見直し等も行っております。また市営住宅がたくさんあるわけでありますが、空いている市営住宅の借地部分につきまして、民間に返還するべく今、事業を進めているところでございます。 そういった複雑な状況が今も続いているわけでありますが、最近は明るい話題も多くなってまいりました。例えば昨年5月ですけども、福島県で初となります国際首脳会議、第7回太平洋・島サミットが開催されまして、「福島・いわき宣言」の採択が行われました。これは本市にとって歴史的な出来事だと思っております。また昨年の10月ですけども、皇太子ご夫妻が54年ぶりに本市を訪問していただきました。また天皇陛下に対しましてもいわき産の米を献納することができました。こういった明るい話題を1つの復興のバネとして、これからもさまざまなことについて取り組んでいきたいと思っております。