【月刊ラモス】ラモス瑠偉×木村和司(1)レジェンド2人が熱い10番談議「10番の選手を見とったらそのチームの強さや魅力が分かる」
今回の「月刊ラモス」はラモス瑠偉編集長と木村和司さんの「レジェンド対談」をお届けする。ラモス編集長は読売クラブ、ヴェルディ川崎の10番として、木村さんは日産自動車、横浜マリノスの10番として80年代から90年代初頭の日本サッカーリーグ、そしてJリーグの創生期を支え、しのぎを削った。そして日本代表でも司令塔として10番を背負い、 チームをけん引した。いまの時代に絶対的な10番は必要ないのか。2人のレジェンドが繰り広げた熱い10番談議を、3回にわたって連載します。 ラモス おお、アミーゴ。元気そうでなにより。 和司 なによ、おまえ。 ラモス 後輩なのにおまえって言うのは、この人だけよ。和司のことは明治大学の時から知っていて、うまくて、日産に入ってウイングで活躍して、中盤になって10番付けて、すごく似合っていた。自分の中では、10番をつける選手はほんとに天才で、才能あって、試合の流れを変えられる選手だとずっと思っていた。日本にも、そこそこうまい選手はいたけど、和司を見たときに、やっぱりこの人が日本の10番、彼以外にはいなかったね。 和司 ラモスもうまかったもん。うまくなった…かな。この人、来日したとき、最初センターバックだった。だからやっぱ、ブラジルってすごいなと思った。センターバックやってんのが、日本の10番よ。 ラモス 和司の存在は私にとって大きかった。あなたのプレー見て学んで、川勝(元読売クラブ)のプレー見て学んで、古前田さん(元フジタ工業)見て学んで。彼らのまねをしていたのを、みんな知らないだけ。もともとはセンターバックだけど、日本でうまくなった。和司は常に先を考えている選手だった。それに意外性があって、和司が明大の学生だった時から、ここにパスを出すなと読んで動くと、逆を取られることがあった。日産に入ってからもワンタッチ、ツータッチであそこまでゲームの流れ変えられるのは和司しかいなかった。そして、和司のような意外性のある選手もいなかった。 和司 ゲームを作るとか、変えるとか言うのもあるけどね、わしが一番大事だと思うのは、遊べるかどうか。ワシの基本は遊びだもん。サッカーって、遊べるかどうかよ。ロナウジーニョ(元ブラジル代表)は本当に楽しそうにやる。すごいよ。あの人は。 ラモス 彼はサッカーのピカソ。意外性がありすぎ。サッカー楽しんでる。彼のプレーを見ていて、和司を思い出した。和司はああいうタイプ。 和司 別に10番、10番とこだわらんでもええけど、見る方からしたら、やっぱり10番がピッチにいてほしいよね。10番の選手を見とったらそのチームの強さや魅力が分かるもんね。プロサッカーはサッカーで観客を喜ばしてなんぼ。 ラモス もちろん勝利にこだわることは大事だけど、ちょっと余裕があればお客さんを喜ばせることも大事。オールスターの時、日ごろ一緒に練習しなくても、お互いに何したい、何してあげたいが分かる。それが楽しくてしょうがなかった。 和司 サッカーを知っているレベルの高い選手が集まってプレーするのは面白いよね。普段、いっしょに練習してなくてもできるんだもん。 ラモス いや、最高だったよ。リーグになって最初のオールスターで、リトバルスキとおれと和司で一緒にプレーできたのは最高だったよ。 和司 昔は、魅せるプレーを嫌ってた人がいっぱいたなあ。特に上の方の人が…。そんなことするなって。ハアッ!?って思った。わしからすると、それでは日本サッカーはメジャースポーツにならない。この人の考え方は、観客のことを考えていないから絶対ダメだな思っていた。 ラモス やっぱり魅せないとだめでしょ。そういううまさをリスペクトして認めるべきだ。真剣勝負でありながら観客を喜ばせる選手がいなくなったら面白くない。Jリーグが始まって、いいサッカーや、いいプレーよりも、目先の勝敗ばかり注目されるようになった。その頃の和司は、試合に勝っていても納得してない顔をしていたのを覚えている。 和司 10番のプライドとか、わしゃ、そんな好きじゃないし、サッカーを楽しむのがいちばん。高いレベルでサッカーを楽しめるかどうか、いいプレーやいい試合で観客を楽しませるとか、プロだから、見てる人に楽しんでもらわないと。日本代表とクラブは違った考え方とかあるし、勝負に勝たなければならない。でも、さっきのロナウジーニョじゃないけど、自分たちがやっぱ楽しまないと。楽しいスポーツなんだから、見とってもこの選手は何をするんだろうってワクワクさせてくれる。ほんと、楽しそうにやる。え~な~と思う。(企画協力・KAKU SPORTS OFFICE)=続く
中日スポーツ