小山正明さんのパームボールは魔球だった。変化球で大切なのはストライクを取れること、そして真っすぐと同じ腕の振りであることだ【張本勲の喝!!】
思い出の変化球
東京時代の小山正明。阪神から移籍1年目の64年、パームボールを武器に自己最多の30勝を挙げた[写真=BBM]
この号は変化球の特集ということで、私なりに思い出の変化球を挙げてみたい。この手の企画は過去に何度もやっている記憶があるが、あらためて思い出してみる。 私の中で強烈な印象として残っているのは小山正明さん(阪神ほか)のパームボールだ。小山さんは歴代3位となる320勝を挙げた大投手。阪神のエースとして活躍していたが、山内一弘さんとの“世紀のトレード”で東京に移籍し(64年)、パ・リーグにやって来た。 小山さんはカーブもシュートも投げていたが、やはりパームボールが際立っていた。実際に打席に立ち、真っすぐと思って振るとクッと沈んで空振りとなる。ずいぶんと手こずったものだが、小山さんのパームボールはスピードも回転もあって、真っすぐとの区別がつかなかった。しかも“投げる精密機械”の異名をとっていたことからも分かるように、抜群の制球力だったから、打てなかったのも無理はない。しかも沈むというよりは、ストンと落ちるフォークボールのような落差だったのだ。誰の変化球が一番すごかったかとよく聞かれるが、私は真っ先に小山さんのパームボールを挙げている。 カーブで言えば、杉浦忠さん(南海)、金田正一さん(国鉄ほか)も印象深いが・・・
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週刊ベースボール