給食のパイナップルがつなぐ台湾との友好 茨城県笠間市
2019年から続く〝特産品交流〟
「芯までサクサク、外側も柔らかい……」 茨城県笠間市の大原小学校、給食の時間。6年生の男子児童が不思議そうな表情で口に運んでいたのは「台湾パイナップル」だ。 【写真】給食でパイナップルを盛り付ける児童 5月16日、笠間市の全小・中・義務教育学校16校の給食に、カットされた台湾パイナップルが並んだ。台湾パイナップルは糖度が高く、中央の芯までおいしく食べられる。旬は4、5月。この日は台南市産の「金鑚(きんさん)パイナップル」406個を買い付け、給食センターや各校の調理場でカットした。 笠間市は観光客の誘致などを図るため、2018年に台湾・台北市に「笠間台湾交流事務所」を開設。翌年11月、事務所の設立1周年を記念し、台湾から提供されたバナナを給食に出した。それ以降、年に数回、給食にマンゴー、かんきつのブンタンなど台湾フルーツを出しており、台湾では笠間産栗から作ったペーストが飲食店で使われている。 こうした“特産品交流”を深める中、4月3日に起きた台湾東部沖地震では笠間市が義援金を募り、市民らから48万円が集まった。 「家ではあまり食べたことがない」と児童が話すように、日本では輸入パイナップルの9割がフィリピン産。中台間の緊張を背景に台湾パイナップルの主な輸出先だった中国が21年に輸入を停止。日本への輸出が拡大した。財務省によると、日本が20年に輸入した台湾パイナップルは2143トンだったが、23年には1万5216トンと7倍に増えた。 給食が始まる前の4時間目。6年生が社会の授業で学んでいたのは、11年の東日本大震災で世界各国から受けた支援について。「柔らかくて、甘くてとてもおいしい」と笑顔でパイナップルを食べていた小坂部葉奈さん(11)も「台湾の人々がたくさん支援してくれたと知り、優しい国だと思った」と思いを寄せる。 今年も台湾バナナが旬を迎える11月ごろ、給食に登場する予定。フルーツが世界への想像力を育んでいる。
日本農業新聞