「どれくらい気張ったか覚えていないが 何かが出た感じあった」バイト先トイレで産み落とした男児死亡 法廷で母親が見せた悔恨 風俗店勤務… 隠し通した望まぬ妊娠 便座のフタ閉め… 溺死の我が子には「本当に申し訳ない気持ち」
「トイレで出産 どうやって」「破水」妊娠や出産に関する言葉を検索
父親が分からない望まぬ妊娠だったことは確かだが、公判では不合理な供述を見せる被告の姿もあった。 事件の約3週間前から被告は「妊娠後期」「トイレで出産 どうやって」「臨月 お腹の張り」「胎児 臨月 お腹の中」などと、妊娠や出産に関する言葉を何度もインターネットで検索していた。事件当日の朝も「破水」と検索している。ところが被告は、“妊娠していることを確信はしていなかった”という旨の供述を展開した。 さらに事件当日、救急隊員の説得に応じて個室トイレから出た際、被告は便座のフタを閉めていた……。 (6月6日の被告人質問) 裁判長「赤ちゃんが亡くなった時の状況を聞いて、あなたはどう思いましたか?」 被告 「本当に申し訳ない気持ちです」 裁判長「便座のフタを閉めちゃっていますよね?本当にあなたは便槽の中から、赤ちゃんを取り出す気持ちはあったんですね?」 被告 「ありました」
バイト先の店長は被告を解雇せず居場所を空けて待っている
被告にとって救いなのは、社会に戻った後に “独りではない” ということである。驚くべきことだが、現場となったアルバイト先の飲食店の店長は、事件後も被告を解雇することなく雇用を継続していて、社会復帰時の居場所を用意してくれている。 (6月4日の証人尋問) 店長「(事件前に)一声あげてくれたらなと思いました。助けを求めてくれたら、何かできたのではないかと今でも思う」 「やったことは責任を取らないといけないが、やっぱり立ち直ってほしいです。(雇用継続は)そういう思いからです」 現実的に早期の復職が可能かどうかは分からないが、罪を犯した多くの人が、社会復帰後も孤立や孤独にあえぐ中、これほど心強い支援はないのではないか。
「公的な第三者が社会内更生に関与することが重要」保護観察付き有罪判決
検察が懲役4年を求刑して迎えた、6月13日の判決公判。大阪地裁(三村三緒裁判長)は、「臨場した救急隊員に出産の事実を告げなかったばかりか、個室トイレの鍵を押さえて開かないようにするなどした上、便座のフタを閉めてトイレから出てきた。我が子を助ける意思はなかったと認められる。ただ、精神的混乱の中、救命措置を講じなかったことに全く酌むべき点がないとも言えない」「父親の分からない望まぬ妊娠であり、自分のことを話すのが苦手な性格や金銭的困窮などの事情も影響しているとはいえ、結局自ら現実に向き合わないまま出産に至った」と指摘。 その上で「内省はいまだ十分に深まっておらず、公的な第三者が社会内更生に関与することが重要」として、被告に懲役3年・保護観察付き執行猶予5年を言い渡した。 これまでの公判と同じく、終始うつむいていた被告は、執行猶予や保護観察についての説明を聞いていた際、かすかにうなずいていた。 死亡した男児を火葬し天国に送るにあたり、被告は亡き我が子に「そら」という名前を付けたという。判決で勾留から解き放たれ、裁判所の外に広がる青空を見上げた時、何を思っただろうか。
◆思いがけない妊娠・望まない妊娠 相談窓口 思いがけない妊娠・望まない妊娠をした時のために、自治体が相談窓口を設けています。 大阪府「にんしんSOS」0725-51-7778 LINEコールも (月曜~金曜 10時~16時 日曜 12時~18時 土曜・祝日休み) 兵庫県「予期せぬ妊娠SOS相談」078-351-3400 LINEやメールでの相談も (24 時間365日受け付け) (MBS大阪司法担当 松本陸)