認知症の親を追い詰める「記憶の確認クイズ」 大切なのはいち早く「答え」を明かすこと
認知症の家族に対して、ついやってしまいがちなのが「これわかる?」という質問。でも、これは本人の自尊心を傷つける行為なのだと、理学療法士の川畑智さんは言います。不要なクイズで試したり、頭から否定したり、思考停止してしまうような「スピーチロック」を投げかけたり……。認知症の人についやってしまいがちなNG行為とその対策法を、川畑さんの著作『ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ』より、一部抜粋・再編集してお届けいたします。 【画像】認知症の方に「今日は何月何日か言える?」など、「記憶の確認クイズ」を出すのはやめたほうがいい
■その「クイズ」が自尊心を失わせる 認知症の方のご家族に、「絶対にやめてください」とお願いしていることがあります。 それは、「記憶の確認クイズ」を出してしまうこと。 「今日は何月何日か言える?」 「今どこにいるのか、わかる?」 「孫も連れてきたよ。名前なんだったっけ? 前も来たでしょう?」 施設に面会に来られるご家族でも、このように質問を畳みかけるケースが少なくありません。 認知症がどれだけ進んでいるのか確かめたくて、つい聞いてしまう気持ちはよくわかりますが、認知症になっても、人格やプライドは当然残っています。
試されるようなクイズは、苦痛でしかありません。 ましてや、答えられなかったら自信を失いますし、ご家族も「前より悪くなった」とショックを受けます。 お互いが、曇りを通り越して「大雨」になってしまうような質問を、あえてする必要はありませんよね。 ■クイズの答えを先に出すことで、安心につながる 大切なのはクイズではなく、いち早く自分から名乗って答えを明かすこと。 「○○よ」と名乗ることで、脳の記憶の部分と顔が一致し、「おお、○○か」とわかってもらえます。
場所のことが苦手ならば、「ここは〇〇だよ」と教えてあげましょう。 私たちだって、電車に乗って寝過ごすと、今どこの駅付近なのかわからなくなるときがありますよね。 そして、次の駅のアナウンスが流れると、ホッとするわけです。 これと同じで、先に情報を与えてあげることで、本人は安心します。 認知症の方に対しては、不要なクイズを出すよりも、むしろ先に答えを教えてあげるような形でコミュニケーションを進めてください。