ホンダe:Ny1 詳細データテスト 日常使いはイージー 走りの楽しさは不足気味 ライバルより高価
はじめに
既存メーカーの多くが、最初の真っ当なEVを市場投入してきたが、必ずしも販売台数や利益を見込んでのことではない。EVを投入し、ブランドを確立するべきときが来た、というのが主な理由だ。 【写真】写真で見るホンダe:Ny1とライバル (16枚) その結果、心惹かれるクルマも生まれた。BMWなら時代を先取りしすぎたi3、ポルシェはタイカン、ロールス・ロイスはスペクターといったところだ。ホンダもその例外ではない。 2020年には、コンセプトカーのようなコンパクトEVのEを発売。魅力的なインテリアと優れた小回り性を備え、しかもじつに愛らしい。実際には、航続距離の短さや高い価格のせいで、売れ行きはよろしくないが、そこは重要ではない。ホンダは興味深いEVをつくると、しばし話題になれば御の字だった。 今回のテスト車は、ホンダのBEVを模索するストーリーの新章といったところだ。おそらく、欧州やアジアの競合メーカーが矢継ぎ早に新型EVを投入する中で、ホンダが放つ二の矢はこのe:Ny1のみだというのは驚くべきことだろう。 水素燃料電池だけでなくBEVも先行き不透明だったなかで、ホンダが出遅れたのは間違いない。さらには、ホンダが信頼性に関して、とりわけ北米でゆるぎない評判を得ていた内燃エンジンから、電動化への移行に本腰を入れていなかったのも、無理からぬことだろう。 とはいえ、いまやこのe:Ny1というシャレた名前のEVが存在し、コンパクトSUVであることから、間違いなくE以上の商業的な成功は見込まれている。ライバルは少なくないが、現時点においてホンダがEVメーカーとしてどのように認知されるかをおおよそ決めるクルマになるはずだ。
意匠と技術 ★★★★★★☆☆☆☆
スタイリングにはなじみがあるだろう。ベースはHR-V、日本で言うところのヴェゼルだからだ。外寸もほぼ同じで、この2台の関係は、メルセデスでいうところのGLBとEQBのようなものだ。それでも、見分けるのはさほど難しくないはずだ。 たとえばグリル部分はソリッドなパネルになり、ホイールはマルチスポークデザインが標準仕様だ。バータイプのテールライトを備えるリア周りに変化は少なく、リアのドアハンドルをCピラーに組み込んで3ドア風に見せる処理はヴェゼルと同じだが、EV版はよりノイズレスなエクステリアとなった。 ベースは、ホンダの新世代プラットフォームであるe:NアーキテクチャーF。今後はBセグメントEVにも使用される予定で、駆動輪である前輪の上にコンポーネントをうまくパッケージングしている。小回りや積載能力で秀でたところはなくても、このホイールベースから想像するより長くて広いキャビンを実現している。 モーターは204ps/31.7kg-mで、1756kgのテスト車は公称の0-100km/hタイムが7.6秒、最高速度が160km/h。エントリーグレードのエレガンスは、車両重量が1733kgとなる。バッテリーパックのサイズを考えれば軽いが、これはハイテン材の使用範囲の広さによるものだ。 そのバッテリーパックは、水冷の68.8kWhで、フロア下を占有している。WLTP値の航続距離は412kmだが、ライバルの多くが採用するヒートポンプを積まないので、寒い日にはこれよりかなり落ち込みそうだ。最大充電性能は控えめな78kW。それでも、満タンが近づいても充電速度の低下が少ないので、ライバルより早くフルチャージできるというのがホンダの言い分だ。 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。ダンパーもスプリングもパッシブだ。