ホームレスの溜まり場から憩いの場へ。開園半世紀新宿中央公園の変遷と今後
自立支援の取り組みなどでホームレス激減
新宿中央公園を取り巻く状況が好転するのは、2010年前後からです。新宿区は公園担当や福祉担当の部署が連携し、公園内のホームレスの自立支援に取り組みました。また、社会福祉協議会やNPOなどの協力もあり、公園内のホームレスは激減したのです。 「そうした取り組みのほか、2013年に指定管理者制度を導入。これにより、新宿中央公園の管理を民間委託することになりました。管理を委託したことで、夜間でも公園内の見回りが強化されて治安が向上したのです。また、夏季の水・木・金曜日は“水と緑のEvening Bar!!!”を開催するようになり、夕方から公園内に屋台が出店するようになったのです。屋台の出店は、新宿中央公園が活性化に一役買っています」(同) こうして、新宿中央公園は再び公園として近隣住民やオフィス街の人たちに親しまれる空間になっています。 今年開園50周年を迎えた新宿中央公園は、さらなる魅力向上を掲げた取り組みも始めました。昨年度、新宿区は“新宿中央公園魅力向上推進プラン”を策定。一時期の新宿中央公園は鬱蒼と木が茂っていたこともあって、公園内は薄暗く、人が憩う雰囲気になっていませんでした。 そうした状況を改善すべく、木々の剪定を実施して公園内を明るくしました。また、公園の魅力を高めるために眺望スポットの創出・芝生広場の再生などに取り組む方針を打ち出しています。さらに公民連携も強化し、ネーミングライツの導入やカフェ・レストラン棟の設置も進めています。 「今年6月から、公園内5カ所のうち2カ所のトイレにネーミングライツを導入しました。ネーミングライツの導入で、綺麗で清潔さを保つとともにデザインで特色のあるトイレになっています」(同)
新宿区が新宿中央公園を集中整備する理由
最近では、多くの自治体が公園の有効活用を積極的に推進しています。公園に指定管理者制度を導入する自治体は決して珍しくありません。一方、新宿区は新宿中央公園にリソースを集中させています。先述した“新宿中央公園魅力向上推進プラン”でも、大部分を新宿中央公園の魅力向上に割いています。区内には、多くの公園があるのに、どうして新宿中央公園を集中的に整備し、魅力を高めているのでしょうか? 「区内には戸山公園や新宿御苑、神宮外苑といった大きな公園・緑地があります。しかし、これらは新宿区の管轄ではありません。新宿区には区立公園が約180ありますが、その多くは小さな公園なのです。実は新宿区内には、大きな区立公園がありません。そうした状況を踏まえ、まずは新宿中央公園から率先して魅力向上に取り組むことにしたのです」(同) 新宿中央公園の敷地面積は、8万8000平方メートル。区内の区立公園では最大です。2番目の敷地面積の区立おとめ山公園が約2万7000平方メートル。この数字を見ても、新宿中央公園の広さは突出しています。 区立公園ながら、新宿中央公園は世界のセントラルパークを目指して変化を続けていくことでしょう。 小川裕夫=フリーランスライター