〝2040年の音楽〟を今聴けたなら 「好き嫌いが分かれる」理由 音楽と脳を研究する「予測外れの人生」
「未来の音楽」を予測
――大黒さんは「未来の音楽」を予測しようとしていると聞きました。 ここまで話してきたように、人間の「飽き」と新しいものへの興味が生み出す予測の「揺らぎ」が個人の音楽の好み、さらに音楽の流行りを作っていると、僕は考えています。そして、音楽に対する「揺らぎ」方は、過去から現代に向けて少しずつ自然に変化してきたと捉えています。 その変化の仕方を把握するため、ルネサンスあたりから現代に至るまでの音楽モデルの変化を、脳の「音楽と脳」の観点から体系化しています。具体的には、時代の特徴が出ているクラシックやジャズの楽曲を選び、楽譜をもとに電子情報をコンピューターに打ち込む。 それを基に、音楽の「揺らぎ」方が時代によってどう変化してきたかを、統計学習の視点を入れて分析します。そこで変化の傾向が可視化できれば、今の音楽をもとに未来の音楽が予測できるはずです。 ――未来とはいつ頃を。 当面は2040年あたりの音楽を予測したい。予測した近未来音楽のモデルをもとに自動作曲システムで曲を作り、自分の手で演奏して発表することも考えています。音楽は人間が体を使って演奏するものだと考えているので。 ――ポピュラーの予測はしないのですか。 ポピュラーは市場でウケることが、クラシック以上に求められます。音楽の変化が、人間が本来もつ「飽き」と新しいものへの興味が生み出す「揺らぎ」によるものか、不確かなところがあるので、なかなか難しい。ただ、ポピュラーにも時代を画する曲はあるので、そういう曲を選んで研究し、未来のポピュラー予測もいずれやりたいです。 ――予測が当たる自信は? シミュレーション実験で入念に検証していけば当たるでしょう。その曲を現代人が知ってしまうことで、そうでない曲を作る可能性はありますが、それはそれで面白いんじゃないかな。