パナ撤退、県都に衝撃 福島工場 従業員450人影響大 突然の発表、広がる不安
操業開始から半世紀余り、県都の経済の一翼を担ってきた工場が姿を消す。「建て直しへの投資も視野に利活用策を検討したが、実現できなかった」。パナソニックコネクト福島工場(福島市太平寺)の来年5月での閉鎖が発表された18日、幹部は苦渋の表情を浮かべ、従業員から「突然の発表に驚いた」「今後どうすればいいのか」などの戸惑いが漏れた。地元に長く親しまれ、約450人が働く工場の雇用や跡地利用が定まらない中での表明に、行政や経済界にも影響への懸念が広がっている。 「工場維持のめどが立たなくなってしまった。これまで支えてくれた方、地元福島の方に申し訳ない」。パナソニックコネクトの新家伸浩執行役員らは18日夕方に福島工場で記者会見し、閉鎖理由を語った。 工場は経年劣化に伴うインフラの著しい老朽化に直面していたと説明。パナソニックホールディングス(HD)内で継続の道を探ったものの、建屋の安全性と従業員の安全を確保するのは難しく、建屋の補修や生産設備の更新の費用が捻出できなかったと明かした。
工場は大手家電メーカー松下電器産業(現パナソニックHD)が1970(昭和45)年に開設し、ラジオ生産から始まった。ピーク時の1980年代には約千人が働いていた。システムステレオやCDプレーヤーなどのオーディオ関連機器の累計生産台数は1億台を超えたが、2006(平成18)年に生産を終えた。デジタルカメラも製造したが、市場縮小に伴い2015年には機能を県外に移転。野菜を栽培するアグリ事業に挑んだが、採算を確保できず昨年8月に撤退した。 2015年以降はパナソニックコネクトが拠点を管理し、パーソルファクトリーパートナーズ(大阪市)が貸借契約を結んで受託生産する形に変わった。現在はパーソル社を雇用主として約450人が勤め、車載機器や通信機器を製造している。 従業員には18日夕方に閉鎖が知らされたという。40代の男性は「閉鎖する予兆は感じなかった。これからどこで働いたらいいのか…。まだ何も考えられない」と現実を受け止めきれない様子だった。30代の男性は「市内で働きたいが、これからどうすればよいだろう」と途方に暮れていた。