「プーチン電撃訪朝」でもまさかの「ロシア空軍による事前偵察ゼロ」...そこから推測される「ロシアの窮状」と「中国の動向」
極東ロシア軍の動向
これら米韓の動きに対応しているのは、北朝鮮だけではない。 ロシア国防省は18日、ロシア太平洋艦隊による約40隻の艦船、約20機の航空機(海軍のヘリKa-29、Ka-27等、対潜哨戒機Tu-142M3、II-38等)が参加する海軍演習を日本海、オホーツク海及び太平洋の海域で行うと発表した。 しかし、実際にわが国周辺で確認されたのは、ロシア海軍の駆逐艦「ウダロイI級/8,500トン級」1隻(艦番号「548」)と、戦車揚陸艦「ロプチャーI級/4,000トン級」1隻(艦番号「066」)及び戦車揚陸艦「ロプチャーII級/同」1隻(艦番号「077」)の計3隻のみであり、海上自衛隊が津軽海峡を通狭して太平洋へ進出したこれら3隻の警戒に当たった。 つまり、これが、今の極東ロシア軍にとってできる精一杯の対抗措置だったのだろう。 それにしても、このような日本海の情勢にも拘わらず、この周辺においてロシア空軍の偵察活動や戦闘機による警戒飛行などの活動が全く行われなかったのは驚きである。本年3月4日の拙稿(相次ぐ空軍の主力損失でロシア軍の国防力は「ガタ落ち」した)で触れたようなロシア空軍の窮状は、想像以上に深刻なのかも知れない。https://www.mod.go.jp/js/pdf/2024/p20240619_01.pdf
近い将来に歴史の審判は下るだろう
今回のプーチン大統領の訪朝がもたらすわが国などへの影響については、様々な識者がすでに述べられているので、ここであえて触れることはしない。しかし、日米韓の結束の強化やNATOを含む民主主義国間の軍事的連携の強化で、ロシアや北朝鮮がかなり苦しい立場に立たされ、それが今回のように露朝の軍事同盟化へと駆り立てていることだけは間違いないだろう。 これは、金総書記にとっては大きな賭けである。 今のところ、少し引いてこの露朝の姿勢を静観している中国。場合によっては、トランプ政権が誕生するかも知れない米国。そして、何よりも置き去りにされているロシアや北朝鮮の国民。これらすべてが今後の露朝情勢を左右する要素となり得る。 この会談が、露朝両国にとって復調の兆しであるのか、崩壊の兆しであるのか、これが判明するまでには、それほど長くかからないような気がする。 ・・・・・ 【さらに読む】「プーチン訪朝」「ロ朝軍事同盟」に中国はどう反応したか…? 外交部報道官のあまりにそっけないコメントの真意とは
鈴木 衛士(元航空自衛隊情報幹部)