坂本龍一の存在も、NYに憧れた理由のひとつ─ピアノニスト・角野隼斗が音楽を通した“出会い”を語る
ピアノニスト・角野隼斗が、ニューヨークを拠点にするに至った経緯を振り返り、お気に入りの坂本龍一の楽曲を紹介した。 内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)でスタートした新コーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」(毎週日曜11時30分頃から)。このコーナーでは、角野隼斗が、音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに、楽曲とトークをお届けする。ここでは4月7日(日)のオンエアをテキストで紹介。
ステップアップに繋がった、ヨーロッパでの思い出
1995年生まれの角野は、2018年に東京大学大学院在学中にピティナピアノコンペティションで特級グランプリ受賞。2021年にはショパン国際ピアノコンクールセミファイナリストに選ばれた。 これまでにポーランド国立放送交響楽団、ボストン・ポップス・オーケストラ、ハンブルク交響楽団や、日本有数のオーケストラと共演。拠点をニューヨークに移し、世界各地で活動の幅を広げている。 Cateen(かてぃん)名義で活動するYouTubeは、チャンネル登録者が130万人を突破(2024年4月8日現在)。秋には世界デビューアルバムのリリースを予定中だ。初回放送では、角野がコーナータイトルの由来を説明した。 角野:MUSIC OF THE SPHERESというのは、僕の好きな言葉です。古代ギリシャの時代、ピタゴラスなどが「宇宙には音楽がある」と考えていたんですね。なぜかというと、あれだけ大きな天体が動いているんだから、何かしらの音を発しているはずだろうという考えがあったそうです。天体同士がハーモニーを奏で合って、宇宙全体で大きな音楽を奏でているという考え方は、科学的には正しくないかもいしれないけれど、とっても神秘的で素敵だなと思い、タイトルにしました。 番組では、角野の楽曲『追憶』をオンエア。楽曲はApple Music Classicalの『Classic Session:Hayato Sumino』で配信中の最新曲だ。 角野:もともとは2021年ぐらいに作った曲で、ロンドンで録音しなおしたものです。ショパンのバラード2番のモチーフを基に作っています。あの頃はショパンコンクールでワルシャワに行ったんですけど、あのあと1週間ぐらい期間が空いたのでヨーロッパを放浪することになり、そのときにできた曲です。 当時の角野は英語が話せなかったが、コンクールを終え、「妙に開き直っていた」と振り返る。 角野:いろんな人に「会いませんか」とメッセージを送ったら、ショパンコンクールを見ていたよと言ってくれた人が何人かいて。そのなかの1人がバルセロナに住んでいたトリスターノという人だったんです。先生がいたのでワルシャワからパリに行ったんですけど、そこからバルセロナに弾丸で行ってセッションをしました。海外でミュージシャンの人とセッションは初めての経験だったんですよ。それがすごく楽しかったです。彼もクラシックがバックグラウンドなんだけど、テクノみたいな音楽をやっていたり、DJとコラボしたりする面白い人でした。 その後もロンドン、パリ、など別のアーティストと会った角野。そこで得た経験は、自身の大きなステップアップに繋がったと語る。 角野:では結局、なぜ今ニューヨークにいるんだって話なんですけど、そこから海外の人とコミュニケーションする“怖さ”がなくなってきたんですよね。むしろ面白さに変わり、「世界はこんなに開けているんだ」と思ったんです。