知事東南アジア訪問 成果と課題(上) タイ、ベトナム福島県に関心 誘客へ空路充実不可欠
内堀雅雄知事は10日から14日までタイとベトナムを訪問した。福島空港の国際線チャーター便の運航や県産果物の輸出拡大など、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興につながる多くの成果を得た。一方、観光誘客や販路の維持・拡大に向けては現地との連携の強化が欠かせない。7年ぶりに東南アジアで繰り広げたトップセールスの成果と課題を展望する。(本社報道部・高内広樹) 「福島の美しい自然を見て、おいしい物を食べて笑顔になってもらうことが復興の大きな力になる」。内堀知事は両国の観光関係者と会談するたびに誘客の意義を繰り返し訴えた。観光をはじめとした産業の復興に向け、好調の東南アジアからのインバウンド(訪日客)が極めて重要な意味を持つためだ。 タイの旅行代理店でつくる協会によると、日本への旅行需要はコロナ禍から順調に回復しており、今年の訪日客の予測は約110万人とコロナ禍前の9割超まで回復する見込みだ。今後も日本の人気は続くとみられ、大阪・関西万博で混雑する関西圏を避け、福島県を含む地方都市に分散する可能性がある。
今回のトップセールスでも両国の観光関係者から福島県への強い関心が示された。11日に行われたタイの協会との会談では「桜の見頃など観光情報を積極的に共有してほしい」と具体的な提案があった。12日の旅行、航空会社などを傘下に持つベトトラベルグループとの覚書締結で、来春の連続チャーター便の就航も決まった。県は追い風と捉え、これまで以上に旅行商品の造成などに力を入れる方針だ。 ただ、県は誘客を維持し、さらなる交流拡大につなげるには福島県側からの送客を含む双方向の取り組みが不可欠とみる。特に、ベトナムに関しては福島空港からの定期便の実現が重要になるが、チャーター便の利用はベトナムからに限られ、県民がベトナムに行くことはできない。県は観光面に加え、企業間交流などビジネス需要の掘り起こしにも力を入れる方針。内堀知事は「継続した相互交流には空路の充実が不可欠だ。県としても運航に必要な支援をしていく」と展望を語った。