金利を上げるわけにも、下げるわけにもいかず「苦しい立場」の日銀・植田総裁
ジャーナリストの佐々木俊尚が11月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆議院財務金融委員会での日銀・植田総裁の発言について解説した。
日銀・植田総裁、「物価見通しに誤りがあったことは認めざるを得ない」と発言
日本銀行の植田総裁は11月8日の衆議院財務金融委員会で、物価上昇率の見通しを繰り返し上方修正していることについて、「見通しに誤りがあったことは認めざるを得ない」と話した。一方、賃金と物価の好循環による物価の押し上げがまだ弱いという部分は「あまり大きく外していない」と強調。こうした見方に基づいて金融政策を行ってきたことに「大きな誤りはなかった」と語った。 飯田)立憲民主党・階猛議員の質問に対する答弁です。
物価高の原因はウクライナ情勢からのエネルギー・食料の高騰と円安
佐々木)植田総裁は、物価高の原因が2つあると説明していて、1つはウクライナ侵攻から始まるエネルギーや食料の高騰です。 飯田)ウクライナ情勢の影響。 佐々木)輸入するものの値段が上がり、それを価格転嫁する、いわゆるコスト高によるコストプッシュインフレの影響です。もう1つは、「賃金を上げると物価も上がる」、「物価が上がると賃金も上がる」という2つの力があるのだけれど、まだ後者があまりうまくいっていない。前者に関しては、ウクライナ侵攻が落ち着つけばエネルギー・食料の値段も少し下がるので「収まっていくだろう」というのが、当初の見通しだったと思います。しかし、それがまったく下がっていない。 飯田)物価が下がらない。 佐々木)おそらく最大の理由はウクライナ侵攻というよりも、円安が続いているからです。なぜ、こんなに円安が続くのかと言うと、アメリカの長期金利が5%くらいまで上がりっぱなしになっているからです。
ここまで円安が続くとは予想していなかった
佐々木)アメリカやヨーロッパはとても景気がよく、賃上げも進んでいます。その結果、金利を上げないとインフレが収まらない状況になっているので、金利を上げている。この状況が1年ぐらい続いているのです。そうすると、日本だけ金利が低いので、円がどんどん売られていく……ということで円安が続いています。おそらく日銀は、円安がここまで続くと予想していなかったのではないでしょうか。 飯田)当初は「今年(2023年)の春先、夏前ぐらいにはアメリカが利下げに転じるのではないか」と言われていましたが、どんどんうしろに倒れてきている。 佐々木)長期金利が5%ですからね。日本だと昭和の時代の金利です。いまは1%未満ですが、昔は銀行口座の金利が5%くらいでした。1億円ぐらい預けておけば、年間500万円ずつ入ってくるから、「宝くじで1億円当たれば一生食っていける」と言われていた時代もありました。アメリカはそのぐらいの金利になっているわけです。 飯田)5%。 佐々木)金利が高すぎてクレジットカードの支払いができなくなる人が増えていて、企業の倒産も相次いでいます。最近だと、米シェアオフィス大手「WeWork」が経営破綻しました。オフィス自体がコロナ禍で儲からなくなってきたところに加え、金利の支払いが大変なので破綻してしまった。