<私の恩人>半沢直樹でも好演 及川光博を支えた人
何度も救われる言葉をいただいた
トークショーから1年くらい後に、舞台のお話をいただいたんです。美輪さん主演の「毛皮のマリー」(2001年)でした。 今でも忘れられませんけど、「毛皮のマリー」の千秋楽の日、博多でちょっとした打ち上げがあったんです。ま、こっちは半べそですよ。感謝があり、“一つの旅”が終わってしまうという寂しさもあり。その時に「勉強をやめちゃダメよ」と手を握って言われました。後から聞くと、打ち上げでみんなでご飯を食べたりするのは、それを最後にやってらっしゃらないと。そう思うと、何かを渡してくださったのかなとも思います。 それからは、互いの舞台やコンサートがある度に見に行ったり、バラの花を贈り合ったり。その中で、救われる言葉をたくさんいただきました。
「相棒」へのオファーも予言されていた
「美形であるだけで差別をされる。それが男の社会ってものよ」。これは美輪さんでないと言えない言葉だと思いますが、言われた時にはすごく楽になりました。 「分かってもらおうなんて期待しちゃだめ。人は見たいものだけを見て、信じたいものだけを信じる。だから、誤解されて当たり前。そう思わないと、つらくなるだけ」。これも、一気に心が軽くなりました。 言い換えれば、人に期待しないということ。信じるのは自分自身であり、未来を左右するのは日々の努力であり、おのれの勉強。いたってシンプルなことでもあるんですけど、なかなか気付けない。僕にとっては、お師匠さんであり、父であり、母であり、…そんな存在です。 あとね、実は、「相棒」で、僕が“2代目相棒”に選ばれる2~3年前、美輪さんに言われたんです。「あなた、刑事もので当たるわよ」と。実際、オファーが来た時には、本当に驚きました。 美輪さんには、僕の全部が見えてるんですかね…(笑)。 (聞き手・文責/中西正男) ■及川光博(おいかわ・みつひろ) 1969年10月24日生まれ。東京都出身。本名・同じ。成城大学卒業。96年に歌手デビューし、その後、俳優としても活動。フジテレビ系「白い巨塔」、テレビ朝日系「相棒」、NHK「龍馬伝」「八重の桜」、TBS系「半沢直樹」などの数々のヒットドラマに出演。妻は女優の檀れい。10月30日には、今年の全国ツアーを収めたDVD「及川光博ワンマンショーツアー2013 ファンタスティック城の怪人」(完全受注生産限定盤7980円、通常盤4830円)が発売される。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年大阪府枚方市生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」に出演中。