「人にぶつけるんじゃなくて、モノで昇華する」映画『オアシス』出演・伊藤万理華が語る、演技と表現について。単独インタビュー
清水尋也、高杉真宙がW主演を務める映画『オアシス』が現在絶賛公開中だ。今回は、本作でヒロイン・紅花役を演じた伊藤万理華さんにインタビューを敢行。撮影現場の裏側から、表現者として大切にしていることなど、たっぷりとお話を伺った。(取材・文:福田桃奈) 【写真】伊藤万理華が超カワイイ…。貴重な未公開グラビアはこちら。スペシャルグラビア一覧
「その場の空気感を感じることを大切に」 記憶喪失のヒロインを演じて
―――登場人物たちの境遇に胸が苦しくなったのですが、愛のある友情に心打たれました。最初に脚本を読んでみて、いかがでしたか? 「岩屋拓郎監督の初長編作品ということで、ルーツみたいなものを感じました。監督の地元である名古屋という街に対する想い、友情や青春時代の憧れ、揺れる関係性や心について書かれていて、それが青くて、痛くて、リアルだなって思いました」 ―――伊藤さん演じた紅花という役は、ある事件をきっかけに記憶喪失になった女性です。どんなことを考えながら演じましたか? 「記憶喪失について、色んな資料をいただいたのですが、紅花は記憶がなくても前を向いて生きている人間だったので、肌感覚的に懐かしいと感じたり、居心地がいいと思うこと、撮影現場で生じる感情の揺れや変化を大事にしたいなと思いました。 清水尋也さんと高杉真宙さんが元々築かれていた関係性に巻き込まれていくという構図は、紅花の境遇と重なる部分もあって。その場の空気感を大切にしたいなと。3人が共に時間を過ごす中で、それぞれが感じたものが『オアシス』というタイトルと繋がっていたので、観ている人にそれが伝わるように演じたいと思いました」
「私は不器用だし自信もなかった」
―――完成した本作をご覧になっていかがでしたか? 「幼いって思いました(笑)。自分の演技を客観的に見ることはできませんが、撮影当時は迷いもあったし、色々と悩んでいる時期でもありそれが顔に出ているなと」 ―――今おっしゃった、この映画における伊藤さんの幼げな印象は、紅花という役に欠かせないファクターだと思いましたし、この映画にとてもポジティブなものをもたらしていると思いました。 「ホントですか!? 良かった…。当時はこれでいいのかと色々考えすぎて、でもやるしかない、という気持ちで演じていたので。幼い印象が記憶を欠いた紅花というキャラクターに活きていたなら本当に良かったです」 ―――普段演じる時に意識していることや、大事にされていることはありますか? 「いい顔をしないようにしています。自分が言える立場ではないんですけど、なるべく“自然体でその場にいる”という感覚を持ちたいなと。 アイドル時代は、可愛く、あるいは美しく見せる、などの見せ方を考えなければいけなかったのですが、自分は不器用だし自信もなかったから出来なくて。諦めの境地に至りました(笑)。でも逆にお芝居をする時は、生身の人間としてそこにいてもいい気がして、それが楽しくて嬉しいんです」 ―――伊藤さんにとってお芝居の魅力は、自然体でいられるところにありますか? 「そうですね。それに加えて、やっぱり映像の現場が好きで、みんなが同じ方向に向かっている時間が好きです。初めてお芝居をした15歳の頃からその気持ちは変わらないです。 どういうプロセスで作られているのかを知ることがお芝居に与える影響は大きいです。なので、できるだけ関わりたいですし、スタッフさんとコミュニケーションを取ると、より一層作品に愛情を持てるようになります。今回の映画でも、現場のスタッフさんとお話ししている時間が憩いのひとときで、私にとっての“オアシス”でした」