【社説】政治資金改革 アピール合戦で終わるな
自民党派閥の裏金事件に端を発した「政治とカネ」の問題にどう対応し、国民の信頼を取り戻すか。それが衆院選の最大の争点だ。信頼なくしては、国政を前に進めることができないからである。 各党は先送りされている政治改革を公約した。その本気度、実行力が問われる。 派閥が主催した政治資金パーティーの収入の一部を議員が政治資金収支報告書に記載せず、裏金化していたことが発覚して1年近くがたつ。 この間、自民党は国民の批判をよそに、裏金づくりの実態解明に踏み込まなかった。これでは有効な再発防止策が打ち出せるはずもない。 先の通常国会で自民、公明両党の主導で成立した改正政治資金規正法は「抜け穴」が目立つ。パーティー券購入者の公開基準を「20万円超」から「5万円超」に引き下げた程度で、それ以下は記載義務がない。裏金をつくる余地は依然として残っている。 政党が議員に支給する政策活動費も、領収書の公開を10年後とするなど、不透明な資金が温存されたままだ。 衆院選になって、国民の厳しい視線を意識しているのだろう。各党は政治資金改革をアピールしている。 政策活動費は立憲民主党や日本維新の会などの野党と公明が廃止を公約した。自民は「将来的な廃止も念頭」と煮え切らない。 自民総裁の石破茂首相は衆院解散前の党首討論で、衆院選で「使うことはある」と答えた。その後は「抑制的に使う」「選挙においては使わない」と発言が変わっている。 政策活動費は使途の報告義務がなく、過去にも選挙に巨費が投じられた疑いがある。自民が「透明性の確保」を主張するなら、衆院選で使ったかどうかを明らかにするのは当然だ。廃止に踏み込めない理由の説明も必要だろう。 30年来の懸案である企業・団体献金の扱いは意見が分かれる。多くの政党が禁止を訴えるのに対し、自民は公約で触れなかった。 リクルート事件など金権腐敗政治の反省から、1990年代の政治改革で与野党は企業・団体献金の禁止を確認した。その代わりに政党交付金制度を導入し、国民に政治資金を負担してもらっていることを忘れてしまったのか。 首相は「大事なのは政策が左右されないかどうかで、献金は認めるべきだ」と禁止に反対する考えだ。 国会議員に月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や、未使用分の国庫返納は与野党の考えがおおむね一致する。衆院選の後、速やかに実現すべきだ。 政治改革は与野党を超えて果たすべき責務である。各政党に改めて自覚を求めたい。「選挙の方便」になるようでは、政治の信頼回復は遠のくだけだ。
西日本新聞