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国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、理想の子ども数より予定子ども数が少ない夫婦にその理由を尋ねたところ最も多かった理由が「子育てにお金がかかりすぎるから」だったという。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。 「高年齢で産むのは嫌だから、欲しいけれどもできないからが続きます。特に30歳未満の若い世代では経済的理由を選択する割合が高い。昨今の物価高に加え、光熱費などの増加、制服代、習い事など教育費…子育てには想像以上のお金がかかります」。 幼いころはもちろん高校生、大学生になると大人と同じ1人の人間。食べる量も着るものもお金がさらにかかる。 「高齢出産増えている現実からも複数人の子を持つことが難しくなっているのでしょう。さらに家計を圧迫しているのが社会保険料をはじめとする税金の増加。可処分所得が減り続けるなかで2人目以降の出産を躊躇するのは当たり前と言えば当たり前かもしれません」。 変わりゆく日本の出産、そして子育て。今、親になる人たちの親。60～70代は専業主婦が多く、少し貧乏をしても子供を数人産み、育てることが幸せとされていた世代だ。彼らとの摩擦にうんざりしていると話すある女性に話を聞いた。 -------------------------------------------------------------------------------------------

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児玉志津香さん（仮名・42歳）は、39歳で1人目の子供を産んだ。不妊治療の末の妊娠。さらに高齢出産だ。 「不妊治療の期間はさほど長くはありません。半年くらいでできたので、多分すごくラッキーなほうだと思う。結婚したのは36歳のとき。仕事も忙しく、子供のイメージはなかなか湧きませんでした。夫も同様の気持ちだったので夫婦としては良かったんですが…」。 両家の親は孫を望んでいるように思えたと話す。 「このご時世ですし、直接は言いません。でも明らかに孫はいつ?と思っている感じ。多分経験した人ならわかると思うんですけど、言葉の端々に期待を感じるんですよね。それもまぁ仕方のないことなんでしょうけど」。 紆余曲折を経て、結果妊娠をした志津香さん。それ自体はとても幸せなことだったと話す。 「産んでみて子供はとても可愛いと改めて思いました。産んで良かったとも。でももう1人、とはなかなか思えないのが本音のところです」。 高齢出産だったこともあり、子育てのスタートはなかなかハードなものだったという。 「思っていた以上でした。寝てくれない子供にパニックになったことも数知れず。こんなに子育てが大変だとは思ってもみませんでした。仕事しているほうがよっぽど楽。全然思い通りにならないことに疲弊する毎日でしたね」。 思うように動かないカラダ。それでも復帰のためには入園書類の準備などもしなければならない。予防接種などもあり、やることが次から次へと押し寄せてくる。 「これまでいかに自分のことしかしてこなかったかと思い知らされましたね。人間が1人増えるだけでこんなに作業も出費も増えるだなんて。食事だって大人だけなら買ってきた安物で済みますけど、ミルクとか離乳食とか高いし、オムツ代もバカになりません」。 そもそも兄弟を!とは思っていなかったが、夫も自分も3人兄弟。 「産む前は漠然と兄弟を産む流れになると思っていましたが、そんな気持ちにはなれませんでした。夫とは言葉にはしていませんけど、もうないよね、みたいな感じでしたね」。 そんななか兄弟信仰の深い母と大喧嘩することになる。 「年齢は74歳。すっかり高齢者です。父も存命ですが仕事はしておらず、家にいると言い合いばかりになると母は話しています。でも離婚はしないでしょうね。多分すごく一般的な夫婦です」。 彼女は専業主婦。志津香さんが大学生になってから働き始めたタイプだ。 「だからそもそも働きながら子育てすることに疑問があったんじゃないですかね?何か言われたことはありませんでしたけど」。 娘が1歳になった頃のことだ。食事会を開き、両家揃って写真を撮影したという。 「記念に。もう2度とないですし、すごい安いプランを見つけたので。撮影をしていい雰囲気で食事をしていたときのことでした」。 ーやっぱり兄妹はいたほうがいいですよね～。 母と義母の何気ない会話がきっかけだった。 「私も大人なのでそんなこと言われたくらいじゃキレたりしません。事実いたほうがきっと楽しいだろうとも思うし。でも次の言葉を言われた時にプチッと来ちゃったんです」。 ーこんな豪勢な食事とか撮影は我慢してもう1人産んだらいいのに。 ー子育てって少し貧乏なくらいがちょうどいいのよ。 【後編】では志津香さんと実母のバトルをさらに追っていく。 取材・文/橋本 千紗