Meta日本法人を被害者が提訴 相次ぐSNS投資詐欺、AI規制の緩さがあだ
際立つ日本の規制の「緩さ」
生成AIによるフェイク情報を取り締まるには、AIそのもののルールづくりも必要だ。AIの健全なビジネス活用に取り組む任意団体、AIガバナンス協会の担当者は「基盤モデルの開発者からプラットフォーマーまで、バリューチェーン全体でリスクを抑えることが重要だ」と強調する。 日本はもともとAIの国際的なルールづくりを主導してきた。23年5月の主要7カ国首脳会談(G7広島サミット)で打ち出した、AIルールの枠組み「広島AIプロセス」は既に各国の合意を得ている。 しかし足元では一転、日本はルールづくりに出遅れた「緩い国」と評されることが増えた。日本はこれまで規制に慎重で、ガイドラインなど強制力のない「ソフトロー」を中心に国内のルール整備に取り組んできた。いわば企業の自主規制に期待してきた。だが、EUに続いて米国も、AIのリスクを重視し強制力を持つ「ハードロー」の策定にかじを切ったことで、日本の緩さがより際立つようになった。 AI規制の動向に詳しい関係者は「(ハードロー抜きでは)国際的な議論の場に立つのが難しくなった」と話す。 「水は低きに流れる。日本が規制の緩い国と見なされ、違法行為が集中しては困る、という問題意識は政府にもある」とこの関係者は明かす。急増するSNS型投資詐欺は、規制の緩さにつけ込む形で日本に違法コンテンツが流れ込み始めている一例とも言える。 日本も急ピッチで各国と足並みをそろえにかかる。自民党は2月から「責任あるAI推進基本法(仮)」の素案を基に議論を進め、ハードローの必要性を説く。規制の範囲は狭く、実際は「AIの健全な発展による利益を最大化するため」(立法趣旨)の法案だが、ハードローであることに変わりはない。日本にとって大きな転換点となる。 5月にはパリで経済協力開発機構(OECD)の会合が開かれ、日本は議長国を務める。生成AIの国際的なルールづくりについても議論される公算が大きい。日本は「緩い国」という評価を脱し、イノベーションと規制のバランスを取っていけるか、世界から試されている。
杉山 翔吾